幻想と公園
20時過ぎに、ふと目を覚ました。
寝ぼけた頭では、今が何時で、どうして眠っていたのかも分からなくなっていた。
そういえば牛乳が切れていたなぁ。
近所のスーパーは21時に閉まる。
そんな事をぼんやりと思いながら、重たい体を起こした。
仕事から帰宅し、すぐにタンクトップと短パンのみの完全に寝るだけの格好になっていたので、そのままTシャツだけかぶり、財布とスマホと鍵だけ持ち、寝ぼけた頭のままスーパーへ向かった。
クーラーを入れているためひんやりとしている自室とは対照的に、外の空気は生温い。
幸い少しだけ風が吹いているが、それでもじめっとした暑さがまとわりつく。
寝起きではあるが荷物もほとんどないに等しいため、足取りは軽い。
家からスーパーへの道のりは、商店街を通っていく。
商店街はこの時間でも、家に帰る途中であると思わしきサラリーマンや、自転車に乗った人々の往来が結構ある。
そして商店街の途中、スーパーと自分の家の、ちょうど中間地点あたりに小さな公園がある。
昼間は子どもたちの遊ぶ姿で大層賑わっているが、夜になるとほとんど人はいない。
そういえば以前、Twitterで「イマジナリーフレンドがほしい」とつぶやいた事があるのだけれど、今日、今この瞬間、イマジナリーフレンドが具現化してくれないだろうかと、公園を横目にしながら思った。
「今からちょっと公園で飲もう」
と、なんともなしに集まって、このTシャツと短パンという何も考えない風体のまま、なんでもない話をするという「夏」がしたい。
最近気に入っている安い発泡酒などを飲みながら、取り止めなく、些細だけれど些細でない話をしたい。
そんな妄想をしながら、牛乳を4本と、もう晩御飯を作る気力も残っていないので、半額になっているお好み焼きを合わせてカゴに入れ、レジに並んだ。
どうでもいい事だけれど、もうここに住んで数年経つというのに、今日初めてこのスーパーでお惣菜を買った。
なぜ今まで利用しなかったのだろう。温めるだけでかんたんに食べ物にありつけるとは。
通いなれたスーパーの中でさえ、自分の行動は限定されていて、自分の意識の外にあることには気づきもしないのだなと思った。
今日は、お惣菜記念日だ。
そしてこれもどうでもいい事だけれど、牛乳を4本買っても、一人で一週間持つか持たないかというくらい、もりもりと牛乳を飲む。
身長が伸びてほしい。
4kgほどの荷物を持ち、先程よりは少しのろのろと、また公園の横を通り過ぎる。
イマジナリーフレンドが現れたなら、花火もしたいな。
そんな事をぼんやりと考えていた。
自分の中で膨れ上がった公園にまつわるその設定は、ありふれた日常のような一幕だけれど、自分にはとてもとても、遠い。
そんな「夏」が幻想である感傷に浸りながら運ぶ牛乳は、こころなしかとてもとても、重い。
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これ、つい先程までの自分の中のリアルタイムノンフィクションを書き起こしただけなのだけど、誰が得をするのだろうか。
読んでくれて、ありがとう。(本当に)
イマジナリーフレンドはいつでも募集中です。
ただし、イマジナリーであること。
おあとがよろしいようで。では、また。
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