この街
ベランダから見える景色が、結構好きだ。
よく猫がのんびりと、そして軽やかに屋根の上を散歩しているのが見える。
深夜にたまに行くだけなのに、いつも買う銘柄を覚えてくれている店員さんがいるコンビニ。
ピクニックに行くような気分で、昼食のサンドイッチを買うパン屋。
とんでもなく安い価格で、いつもお気に入りの髪型に仕上げてくれる美容室。
……の人は、いつか「髪型って芸術品を作るみたいで、楽しいですよ」と、はつらつと教えてくれた。
「我が生命線!」と言っても過言ではない、通いなれたスーパー。
いつも自分のゆっくりと選ぶペースに合わせて、選び終えた頃「決まった?」と声を掛けてくれる、穏やかな店主の花屋。
新生活の始まりと同時に何気なく訪れて、一目惚れしたグラスが置いてある雑貨屋。
「そのグラス、もう廃番になってしまったんですよ。」
体調を崩したときに、不注意でかけてしまったグラス。
変わらないものなんて、ない。
だけれど、この街を、
自分が思っている以上にこの街を、愛してしまっている。
そしてそんな街にある、ありふれたワンルームのこの部屋も、愛してしまっているのだ。
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