【随想】「消費者市民社会」ってなんだ!?#1−(1/5)
最近、消費者問題をウォッチしている人々や消費者行政に関わる人々の間で、にわかに、そしてしばしば話題にのぼる「ことば」がある。「消費者市民社会」である。ご存じの方も多いと思うが、これは、先年制定された「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年法律61号)、いわゆる消費者教育推進法において、消費者教育の理念、あるいはそれが目指すべき理想の社会像として明示的に掲げられていることばである。
消費者教育推進法が制定されてからというもの、消費者関係の集まりのたびに、「消費者市民社会とは何ですか?」、「消費者市民社会というものをどう理解すればいいですか?」、「消費者市民社会の考え方を消費者の運動や活動にどのように活かしていけばいいですか?」というような質問をたくさん受け、わたしは辟易しながらも、ちょっとした違和感を感じていたのである。
もっとも奇異に感じたのは、本来、法律の文言には、国民のそれぞれがその法律の意味を適切に理解できるよう、多くの国民が共通して認識し得ることばが用いられるのが通常で、法律が制定された後に、ことばの意味について質問があれこれ出されるというのは、なんとも不思議な現象だと思わざるを得なかったのである。それくらいこの言葉はわたしにとっても多くの国民にとっても聞き慣れないことばであった。
当然、ある意味で新しい用語がこの法律に導入されたのだから、当然、定義がなされるはずで、確かに消費者教育推進法にはちゃんと「消費者市民社会」の意味が記されている。
「消費者市民社会」とは、「消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう」(消費者教育推進法2条2項)と。
定義はある。だが、これだけではその真に意味するところを掴みかねるのであろう。それが、わたしに向けられた多くの質問の原因である(2015年4月5日記)。
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