【随想】商品か機能か#2:ソフトのセット販売(2/5)

 90年代に登場した「ウェブ・ブラウザ」。インターネット上に存在するホームページをブラウジングする(閲覧する)アプリケーションソフトウェアは、これまでにない新たなジャンルとなり、ネットスケープ社の「ネットスケープ・ナビゲーター」は、そこにおけるほぼ唯一のソフトウェアとして君臨した。
 一方、90年代中盤になると、パーソナル・コンピュータ(PC)を革命的に使いやすくするオペレーティング・ソフトウェア(OS)の開発が実を結ぶ。マイクロソフト社の「ウィンドウズ95」である。同様のソフトウェとしてアップル社の「マックOS」がすでに存在していたが、高価であったり利用可能な機種が限られているなどの制約からビジネスユーザーの大多数の支持を得たのはウィンドウズの方だった。
 OSは基本ソフトとも呼ばれ、PCを動かすのに不可欠な基本的な機能を備えている。そして、ウェブ・ブラウザや表計算ソフト、文書作成ソフトといったアプリケーションソフトウェアは、OSごとその上で動くように設計・プログラミングされており、われわれはOSの付加的な機能としてそれを享受することができる。
 マイクロソフト社は、このような自社製のOSを展開している優位性を遺憾なく発揮し、表計算ソフト(スプレッドシート)や文書作成ソフト(ワードプロセッサ)などの応用ソフトウェアの開発・販売へと手を広げていった。なかでも、マイクロソフト社の表計算ソフト・エクセルは使い勝手がよく、非常に人気があったが、これが多くの人に利用されるようになったのは、品質の良さだけが理由ではない。自社製OSであるウィンドウズとしばしばセットで販売され(さらにはPCに同梱され)ていたことが少なからず影響している。たしかにPCはOSだけでも動きはするが、用途が相当限られる。アプリケーションソフトウェアを搭載することで、より高度な用途に使えるようになる。
 ビジネスユーザーの多くが利用するPCにはウィンドウズが搭載され、さらに同社の表計算ソフト・エクセルが同梱されている。もちろん対価は何のソフトも搭載していないPCよりも割高だが、PCを購入してもOSだけでは仕事にならない。購入したその日からPCを使いたければ、ソフトが同梱されているPCも悪くない。これを「抱合せ販売」という(つづく)(2023年3月5日記)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?