【随想】主婦連合会70周年に寄せて−生活ニューネットの思い出

 先月9月26日、主婦連合会の創立70周年ということで、そのお祝いの会にわたしも招かれ出席した。ふと思い返すと、わたしと主婦連とのご縁は、1990年代中頃以降のことだから、もうかれこれ20年余になる。
 90年代は、コンピュータがパーソナルなものとして普及し始めた時代。95年、マイクロソフトがウィンドウズ95を発売することによって、それが決定的なものとなった。主婦連もこの動きに応じて早々にPCの導入を決断し、機種の選定やPCの設定のお手伝いに当時まだ大学院生だったわたしが主婦連の事務局に出入りするようになったのだった。
 当時は、まだインターネットは一般的ではなく、PCも多くは通信回線に接続していなかった。スタンドアローンでワープロ機能を使い、文書をきれいに仕上げるのがせいぜいだった。しかし、ほどなくしてパソコン通信サービスが一般化し始めると、ネットワーク上での情報のやりとりが頻繁に行われるようになり、主婦連もこれに加入した。ニフティ・サーブやビッグローブといった商用のパソコン通信サービスがメジャーとなる一方、公的なネットワークサービスとして国民生活センターが「生活ニューネット」というパソコン通信サービスを立ち上げたのはとても興味深いできごとだった。消費者行政や消費者団体に関わる人や組織に、たしか500円程度だったと思うが、Eメールアドレスを割り当てていた。その当時から、消費者運動の高齢化がいわれていたが、そういった人々に対するコンピュータ・ネットワークへのアクセスの敷居を大いに引き下げたのではないかと思う。
 また、生活ニューネットは、リコール情報など図表付きで情報提供をしていて、今では当たり前になっているが、当時では随分と先進的な情報発信をしていたといま思い出しても感心する。情報発信に関していえば、生活ニューネットには「消費者団体コーナー」を設けられていたことも、特筆すべきものだった。国民生活センターは、自らの情報発信にとどまらず、消費者団体の情報発信の場を提供しこれを支援してもいたのだった。97年から主婦連も生活ニューネットの「消費者団体コーナー」に登場し、これが現在の主婦連のホームページのもととなった。
 消費者団体による新たな技術の取り込みや情報化への前向きな姿勢、そして行政による消費者団体への支援と協働。なかなか参考になる事案ではないだろうか(2018年10月5日記)。

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