【独占禁止法叙説】6-2 過度経済力の集中の防止(パート2)

(一)過度経済力集中会社の設立・転化の禁止
 2002年改正法(平成14年法律47号)以降、法9条は「持株会社」の規制を専らとするものから、「事業支配力が過度に集中することとなる」会社一般にその規制の対象を拡げてきた。法9条1項は、「他の国内の会社の株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより事業支配力が過度に集中することとなる会社は、これを設立してはならない」とし、同2項は、「会社(外国会社を含む。以下同じ。)は、他の国内の会社の株式を取得し、又は所有することにより国内において事業支配力が過度に集中することとなる会社となってはならない」と定めている。この規定は、いわゆる過度経済力集中会社の設立・転化を禁止するものと理解されている。また、同条の適切な執行を担保するため、一定規模以上の会社は公正取引委員会に対し事業報告書の提出及び設立の届出義務が課されている(法9条5項・6項)(会社とその子会社の総資産の額が、持株会社の場合には6千億円、銀行業、保険業又は証券業を営む会社の場合には8兆円、これ以外の会社の場合には2兆円を超える場合には、毎事業年度終了の日から3ヶ月以内に、当該会社及びその子会社の事業に関する報告書を公正取引委員会に提出しなければならない(法9条5項)。また、新たに設立された会社が、当該会社の設立時に法9条5項に該当する場合には、その設立から30日以内にその旨を公正取引委員会に届出なければならない(法9条6項))。
 なお、法9条3項に定める禁止要件の解釈については先に指摘したガイドラインが示されている(なお、このガイドラインは、1997年改正法律案の採決に当たり、第140回国会における衆参両院の商工委員会において「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社のガイドラインの策定に当たっては、国会の審議を踏まえ、禁止される持株会社の範囲をより明確にし、公正取引委員会の審査における行政裁量の余地を極力排除する」という趣旨の付帯決議を受けたものである)。

(二)「会社グループ」
 「事業支配力が過度に集中することとなる」会社の当否は、当該会社に加え「子会社その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社」を含めた「会社グループ」について判断される(法9条3項)。ここでいう子会社には「会社がその総株主の議決権の過半数を有する他の国内の会社」(法2条10項)に加え、当該会社及びその子会社による間接保有分を合わせ議決権の過半数を占める場合も「子会社」とみなして取扱われる(法9条4項及びガイドライン一-(一)-イ)。また、「その他当該会社が株式の所有により事業活動を支配している他の国内の会社」(実質子会社)につき、ガイドラインは、会社の議決権保有比率(子会社が所有する分を含む。)が25パーセント超50パーセント以下であり、かつ、会社の議決権保有比率が最も高い(他に同率の株主がいる場合を除く)他の国内の会社をいうとしている(同一-(一)- ウ)。

(2024年4月22日記)

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