【随想】商品か機能か#4:わが国の抱き合わせ販売事例(4/5)

 抱き合わせ販売やセット販売の問題性は、二つの方向性で語られてきた。ひとつは、いらない商品を買わざる得ない不要商品強要型、いま一つは、すでに人気を博している主たる商品の力に乗じてこれまで売れていなかった従たる商品の売り上げを増やすことでこの商品を提供している競争者を不利に追いやる競争者排除型である(これはしばしば「レバレッジ(てこ)の理論」と呼ばれている)。
 公正取引委員会は、近年、改定公開されたいわゆる「流通・取引慣行ガイドライン」において、抱き合わせ販売が違法となる場合の考え方として、競争者排除型を中心に捉え、適宜必要に応じて不要商品強要型も問題としていく旨を示している。
 すでにここで簡単に取り上げたが、かつてマイクロソフト社は、表計算ソフトとして定評のあるエクセルにまだ開発されて間もないワードプロセッサソフトのワードを抱き合わせてPCメーカーに供給していたのだが、これが独占禁止法上の抱き合わせ販売として問題とされたことがある。
 この行為によって、わが国ではすでにワープロソフトとして一定の評価を受けていたジャストシステムの「一太郎」の市場シェアが顕著に低下し、最終的には駆逐されてしまった。この事例は、まさに競争者排除型の抱き合わせ販売の典型例に数えられている。
 公正取引委員会の介入のタイミングが遅きに失した感は否めないが、抱き合わせ販売に対して上記のような考え方で規制を行うことについては、おおよそ国際的にも合意されている。
 それでは、ウィンドウズというオペーレーション・ソフトウェアとインターネットエクスプローラというウェブブラウザを合わせて提供してきたマイクロソフト社の行為は、ここで述べたエクセルとワードの抱き合わせ販売と同様に「抱き合わせ販売」と考えることができるだろうか?ウェブブラウザ・ソフトの草創期においてほぼ唯一の存在であったネットスケープ・ナビゲータと一太郎は、同じ立ち位置にあるように見えるのだが、この行為は、どこが何が違っているのだろうか(2023年5月5日記)。

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