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ウクライナ危機 大学生マリアさんの奮闘

ポーランドのトップ大学ヤゲロニアン大学。1364年に設立されたヨーロッパ最古の大学の1つだ。ウクライナ出身で、この大学で生物化学を専攻する4年生のマリアさん。大先輩には地動説のコペルニクスがいる。大学を休学しボランティアとして避難民の支援を行っている。話を聞いた3月下旬時点で、首都キーウの防衛に当たっている父親とは1週間連絡が取れないという。そんな事情は微塵も見せず、笑顔で同胞のお世話に奔走している。
(※その後、彼女から知らせがあり、2週間後に父親の死亡が確認されたということだ。彼女にかける言葉が見つからなかった。)

市民が材料を持ちよりリノベーション

大学は閉鎖されていた寮2棟をウクライナからの避難民のために解放。2年間放置され、取り壊し寸前だった建物をボランティアが材料を持ちよってリノベーションした。今はウクライナから避難してきた170人が暮らしている。

毎日ウクライナ避難民のお世話にあたるマリアさん

生活に必要な物資は全て地元のポーランド人が善意で持ち寄っている。お金は受け付けていないため、全て物による寄付だ。マリアさんがSNSなどで必要なもののリストを知らせると、市民がそれを購入し、ここまで持って来る。

山積みされたオムツ。小さな子供連れの母親が多い

赤ちゃんを連れてウクライナを脱出してきた女性も多く、オムツやミルクなどのニーズも多い。寄付されたオムツなどが山積みとなっていた。また、クラクフ市はロシアの軍事侵攻から1ヶ月もたたないうちに、避難してきたウクライナの子供たちを地元の学校に受け入れた。もちろんポーランド語の補修授業は必須だ。クラクフ市では、市民と行政による分厚く迅速な支援が行われている。

大学生のボランティアが寄付された衣類を整理

マリアさんだけでなく、多くの学生もボランティア活動に参加している。真冬の衣類だけを持参した避難民にとって春が近づき、薄手の衣類も必要になっている。寄付された物資の整理だけでなく、最も需要の高い通訳ができるウクライナ人留学生も多く活動している。ヤゲロニア大学には約2000人のウクライナ人留学生がいる。彼らはウクライナに残した家族の心配をしながら、避難民の支援にも当たっている。

食糧室の整理を行う入居者たち

この施設の運営は全て、ポーランドの人たちの善意の上に成り立っている。なぜ、ポーランドの人たちは、これほどまでにウクライナ人を助けるのか。涙ぐましいまでの支援である。ポーランドの1人あたりのGDPは日本の半分以下。EUの加盟国の中でも裕福ではない。案内してくれた大学の担当者、ミハエルさんは、彼自身も今回のポーランド人の熱い支援にポーランド人として驚いていると話した。そして「ポーランドもウクライナも大国の狭間で歴史の波に翻弄され続けた。冷戦終結後、ポーランドは西側に入り、ウクライナはその願いが叶わなかった。ポーランド人はウクライナの現状を自分たちに起きてもおかしくなかったと、自分ごととして受け止めている」と静かに指摘した。ただ、その上で「善意は長くは続かない。国内のインフレは激しく、すぐに自らの生活を直視せざるを得ない。国際社会は何をしているんだ」と語気を強めた。

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