見出し画像

台風を思うカーブミラー

カーブミラーとの出会いと別れの話です。

昨日は久しぶりに大学に行きました。
私の大学は最寄駅からのスクールバスがあるのですが、夏休み中はありません。
20分ほどの平坦な道を歩きます。

川に沿って進んでいく間に見える山や田畑の風景には、一週間前の台風の爪痕がまだ残っていました。折られた木やめちゃくちゃになったビニールハウスのことが今でも鮮明に思い出せます。

道の中間地点には大きめのカーブミラーがあります。大通りに合流する車が、左からくる歩行者を認識する為に設置されています。そのため歩いている人は合流する車道の方を向いたミラーが見えるわけです。

ところが、今日のカーブミラーは台風の影響で真正面に向いているではありませんか。意図的じゃなく、カーブミラーと対面するという新鮮さに私は驚いてしまいました。
真正面を向く彼は私の姿を映すかと思ったのですが、全面灰色の曇り空が映っていました。なるほど、彼は正面より少し上を向いているようです。

その様子はまるで、仕事をほっぽり出して、何をするわけでもなくただぼんやりしている人みたいで、私はすごく共感してしまいました。高校の頃授業中に窓の外の雲を眺めるあの感じ。
台風のせいで彼はこの状態になっているので、彼は凄まじい台風を思い返しているのかもしれません。

帰路、またミラーを見ようと思ったら残念なことに撤去されていました。まあ役に立たないし、倒れると危険なので仕方ないかと思う反面、なんだか切なくなりました。

彼という存在は仕事ができない人は切り捨てられるという社会のメタファーだったのです。自分がどんな状況でも、 辛い事があっても、関係ない。仕事をしない人はすぐにクビを切られます。

社会の恐ろしさを教えてくれてありがとう。私はカーブミラーを絶対忘れないよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?