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「ジュラ紀に受け継ぐ」について

京都文化博物館では新鋭選抜展という、京都の若手アーティスト達の展覧会が行われている。その中でも大きく取り上げられているのが藤浩志の作品だ。
フライヤーには彼の作品の写真だけが裏表に計4枚も配置され、個展と勘違いするほどだった。

彼の作品は「ジュラ紀から受け継ぐ」と名付けられ、大量のおもちゃをくっつけて何頭もの恐竜を作り出し、その周りにおもちゃを並べてカラフルな空間を作ると言うものだった。インパクトはかなりある。が、フライヤーをみただけではどういうコンセプトで作られたものなのか全く理解できなかった。

なぜ恐竜?なぜおもちゃ?私はこの作品を見るということよりも、この疑問を解決することの方に興味があった。

展示会場はポップな空間が広がり、嫌というほど目に飛び込んでくる色彩に圧倒された。近づいて見るとほとんどのおもちゃがマクドナルドのハッピーセットについてくるものだった。作品には私が子供の頃に持っていた物も多く展示されていた。しかも同じものが何個も並んでいて、懐かしさとユニークさによって私は爆笑してしまった。美術館でこんなに笑ったのは初めてだった。

一通り会場を見た後、作品紹介に目を通した。作品紹介にはこのようなことが書かれていた。
地球上で石油が生み出され、それを原料にプラスチック製品が製造され、人々に使われた後漂流ゴミになって問題になっている。そういう問題を具現化するため、子供達から集めた要らないおもちゃを元に石油が生み出される時代に生存していた恐竜の形をつくり、作品に昇華している。

おもちゃの一つ一つをじっくり見てみるとかなり汚れていたり、シールが貼られているものが数多く確認できた。りなという名前入りのものもあった。このような子供に遊ばれていた痕跡がこの作品にとってとても意味のあるものだと感じた。

この作品で感じ取れたのは沢山の繋がりだ。おもちゃを寄付することによるアーティストとの繋がり、見て楽しむ繋がり、写真を撮ってSNSにアップすることによって見て貰う沢山の人との繋がり。さらに、展示会場では欲しいおもちゃの絵を描くとそれを貰えるという企画まである。作品の一部であるおもちゃを貰うという繋がり。

こういう参加できるものは、作品を身近に感じて貰うことができ、より人に印象を深く残せる。企画力の高さも評価されるポイントになっているのかなと感じた。

そして身近なもの、ハッピーセットのおもちゃを使うことによって、受け入れやすい印象を与えている。老若男女問わず様々な人が観覧し、子供達も食い入るように作品を見ているのが印象的だった。

この作品にはコンセプトに従って捉えるという見方以外に単純に身近なキャラクターを探す面白さが認められているから誰でも楽しめて良いなぁと思った。

私はいつも美術館は静かに一人で回りたいと思っているのですが、この展示は親しい友人と行くことをお勧めしたいと思う。こんなに楽しい展示は初めてだったのでお近くの方は是非ご覧下さい。

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