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リレー

 バイト先の人から人へとご縁があり、現在卒論を抱えながらも新しいバイト先にちょくちょく通っている。そのバイト先の社員がまぁそれなりの社畜で、週休1日あるかないかで働いたりしている。
 その社長は私の本命バイト先の店長の旦那さんであり、先週社員にブチギレているのを見てからかなり引いていた。その後社員さんを労って話を聞いたりしたが、話を聞いているうちに自分も持ち前の偽善心で悲しくなってしまった。人に怒る権利なんて人には無くて、管理職なら人をもっと快適に動かす術を探すべきだと憤った。いつも可愛らしい店長が奥さんでなければあの人の株はダダ下がりだなとも思った。
 そんな社長の体調が急激に悪くなったらしい。思えば店長に社長痩せましたねと言った時、微妙に微笑んでいたのが気になっていた。本当はずっと体調が悪かったけれど、隠しきれなくなったらしい。今日ついに余命の話をしていて、シフトも慌てて組み替えた。
 私は誰でも心穏やかに過ごせることを願う。家に帰って薄い匂いのアロマを嗅いだり犬を撫でたり天井を眺める余裕が誰にでもあれば良いと思う。でもそういう考えに支配されるにつれ、自分の人に対する言葉もよく刺さるようになったように感じる。〇〇ならばこうあるべきだ、とか、そういう視野の狭い意見はたしかにその角度からであれば鋭く尖っているから、私は人のことを話すのがひどく怖い。久しぶりに人を憎んでしまったのと、その人がもうすぐ亡くなるかもしれないことが、全くの偶然には思えなくて恐ろしかった。いつも天使の真似事みたいな優しさを振りまきながら、無慈悲にあの人を恨んだせいであるようだ。

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