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雨の区域

 小さい頃は雨の日が好きだった。
 今日博物館に行ってきて、雨に濡れた若葉の映像を見たらそんなことを思い出した。

 小学校では傘を使って良いのは中学年からで、6歳の休みの日にうかうか傘を持っておつかいに行ったら同級生にチクられた。だから遠くのおばあちゃんの家に行く日に雨が降った日は嬉しかった。おばあちゃんの家がある町の小学生も傘を差しちゃいけないんだろうか。
 おばあちゃんの家の向かいには木に囲まれた立派な神社がある。傘を差しながら木の根元にしゃがんでチクられた時のことを考えた。私はこの町の子じゃないから傘を差して良いのかもしれないし、この町の小学校にはそんな規則が無いのかもしれない。傘を差した私が悪かった?先生は私だから強く叱った。同級生は私だからチクった。私は言葉が出る前に泣いてしまった。早く3年生になりたいと思ったけど、教室が変わっても人間関係は変わらない。こんなこと無かったみたいに同級生は当たり前に傘を使い始めて、私はまた誰かの踏み台だ。
 水滴が落ちる葉っぱは私と違って、綺麗に泣いているみたい。綺麗に見えるのは水滴を弾いているからで、そういう人も綺麗に泣くんだと思う。

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