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生きてるってサイコ〜!

私は今でこそいい成績をお店に残せているが、実は風俗業を初めて4年ほどずっと泣かず飛ばずの時代が続いた。当時は沢山頑張っているのに、成長したいのに、努力だって惜しまないのに、なんでこんなに自分でも伸びないのかが一切分からなかった。

今なら分かるが、私はいい意味でも悪い意味でも良い子ちゃんなのだ。キャバクラでも、恋愛でも、悪い子のほうがうまくいく言うじゃない?まさに私に足りなかったのはそこだと思う。チカラの抜き方を知らないまま、大人になってしまっていたのだ。

固定の太いお客さんが何人もついて、ランカーになれたのは、マゾと出会えたからだ。自分のその「悪い子になる」「一線を超える」ということをことをさせてくれた。変な言い方になってしまったから、誤解のないように言いたいけど、私には包容力こそあれど相手を縛り付けたいとか、支配したいといった自分勝手な欲が無かった。それを見出し、育ててくれたのは他でもない彼の誠実なマゾ性だ。

「あなたが汚くなってもいいですよ、僕はついていきます」と言わんばかりの姿勢でずっといてくれた。

チカラの抜き方とさっき言ったけど、なんだろう本当に私には悪い子になるということができていなかったように思う。誰かを支配したりコントロールすることはいけないことだと思っていた。それをしてしまうと、洗脳と一緒で相手の人生を壊してしまうのではないのか怖かったのだ。

だけれど実際、私は誰かをコントロールしても、根っからの性格が良すぎて「このマゾにどうしてあげたら適切か」とか「幸せな方向にきちんといっているか」を逐一観察している。私に足りなかった本当に一押しを、このマゾはプレイで引き出してくれた。

なので今は自分の好きなプレイを、ほとんど自分の好きなお客さんだけを相手にしながら、生活に少し潤いが出るほど稼げている。

普通はロングで予約を取られたり、1週間に一度必ず会いに来るお客さんがつくと、嬢は疲れる生き物なのだが、私は全くそうではない。本気で濡れるなって思う男性を常に相手にしているし、会話を弾ませようとしなくても頭のいいマゾばかりだから楽しい。なので楽しくお喋りをして、本気でプレイをしていたら普通に時間はあっという間に過ぎていく。マゾたちが可愛くて仕方がない。

さて、今日はこれが本題ではない。長年売れなかった嬢が急に稼げるようになった話、ではない。

これは私が売れなかった時代の話だ。稼げるはずの店なのに、3日の出勤のうち一度はお客さんに1人もつけなかったりした。全然リピートしてくれるお客さんもつかず、いやだな仕事、と思いながら出勤していた。ほとんど暇な時間はゲームに明け暮れていた。

幸いにも風俗業ではあるわけで、それだけ人気があるとは言えない状況でも食べていけたのだ。どんなに手を抜いて、努力をせずとも、最低限生きていける状況にあった。

私は人生でそんな瞬間が今まで一度も無かった。いつでも死ぬ気で努力をし、終わりの見えないノルマを課されて、良い子でいることや、周りに褒められるような人生を送れなきゃ、死ぬしかないと本気で思っていた。誰かに見下されたり、見放されることが何より怖かったように思う。

その頃は、恋人もおらず、おさーんとも全く会わなかったので、本当に私の人生に首を突っ込んでくる人が誰もいなかったのだ。だから私は初めて、誰かに自分の功績を報告しなくていいし、成績が良くないと言い訳をしなくてもよい環境になれたのだ。

あれ、私いま自由じゃね?ってあるときハッキリと気づいた。こんな駄目な風俗嬢で定職にもつかずに、目標に向けて頑張らずに、自分が辛くなったらすぐに休んで、自分にキツい言葉をかけない時間。これって、すごく幸せな時間なんじゃないかってハッとした。

なーんだ、こんなので生きていけるんだ。自分を傷つけながら、鞭を打ちながら、心を奮い立たせて怖いことに立ち向かわなくても、最低限ご飯を食べて暖かい場所で寝られるんだって。

それに気づいた時期は、もう何もしなくても人生が楽しかった。私のその頃の楽しみは、仕事の帰り道に真っ黒な星1つない夜空を見上げることだった。あー、夜空ってインク落としたみてえに黒いんだな、すげえなんか綺麗だなあって。

その空を見上げながら、コンビニで買ったチョコクロワッサンを食べるのが大好きだった。こんなに甘くて美味しいものをブラブラしながら食べて、空を綺麗だなあって見つめられて、今ハッキリ自分は幸せなんだなって自覚した。いつだって何かが足りないような気がして、飢餓感に覆われていたのに、150円のパンを汚い街の空を見上げながら食べるだけで満たされるようになった。

誰かに認められなくても、追い詰められなくてもいい人生ってこんなにラクなんだなあって、そこから私は人生を取り戻せている感覚を掴みだした。その後は1人でも急に仕事を休んで温泉に行ったり、街を散歩したり、映画を見に行った。焦る気持ちや、飢餓感に襲われずに何かを鑑賞すること自体きっと初めてだったように思う。温泉に浸かりながら水の流れを眺めているだけで幸せで、街の建物や緑を眺めるだけで綺麗だなって思えた。

それも充分に楽しみ尽くし、こんなに人生ってラクなんだな、でもなんだか飽きてきちゃったなって思っていた頃に、例のマゾに出会った。

自分を幸せにしてあげたい、人生の暗い部分から、虐待を受けた過去から逃がしてあげたいとずっと思っていたけど、きっと私は着実にそれができている。育ててくれた〜のおかげとか、先生のおかげとか、そういうの一切なく、私の力で最終的にはそうなれた。

死ぬような思いを沢山、本当に沢山してきたけど、生きていてくれてありがとう自分。

誰よりも偉いよ。本当に。

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