見出し画像

[書評] 日立の壁

はじめに

『日立の壁』を読んだのでメモを残します。

書評

品質保証部で現場感覚を鍛え抜かれた著者がコングロマリット企業である日立の社長として、日立の価値を高めるために単純な事業の取捨選択だけではなく、日立グループの持つ情報や技術をバラして再構築することで本質的な構造改革に取り組んだその記録であった。

引用&コメント

個人的な感情や年功序列などとは関係なく、必要なポジション(職位)に対して、社内外を問わず必要な能力を持つ人財を登用するのが、適材適所の原則です。

P.80

必要なポジション=明文化されたジョブディスクリプションがある職務型ってことかな。人の持つ能力を正しく測ることができて、職務を明確に定義することができないと、そもそも適材適所なんて成立しないのだなぁ。

せっかく多種多様な事業を抱えながら、事業同士の相乗効果が生まれない。日立の企業価値が、各事業の事業価値を足し合わせた額より小さくなってしまう。つまりコングロマリット・ディスカウントの状況に陥っていました。

P.87

相乗効果どころか単純合計よりも目減りするからディスカウントっていうのね。Wikipediaによると”コングロマリット(英: Conglomerate)は、狭義には、多業種間にまたがる巨大企業のこと”

話が少しそれますが、私の頭の中にはかねて「自律分散型グローバル経営」というアイデアがありました。(中略)グローバル経営は今や世界の常識ですが、リスクもあります。世界の各拠点が互いに依存しすぎると、自然災害や紛争などで地域情勢が短期間で劇的に変化した場合、共倒れとなってしまうリスクです。

たとえば、安価だからといって資材調達や製造を特定の地域に集約させてしまうと、一時的に効率化できたとしても、その地域で災害や紛争が起こったり通商摩擦が起こったりした際に、その地域からの流通が止まり、サプライチェーンが分断されてしまいます。ビジネスは瞬く間にストップします。

P.89

世界地図を広げて「ここで作れば安い」というだけでは浅い。地政学的リスクとサプライチェーンを重ね合わせて、トラブルが起きても局所的な機能停止で済むような体制を検討する必要があると理解。

さらに工程管理システムや生産管理システムなど既存システムが蓄積する情報を共有することで、管理者の判断の精度により生じていた生産性のムラが均質化し、作業計画を最適化することができます。

P.99

まさに職人技、肌感覚、暗黙知みたいな世界を前職の生産管理部で目撃した。8割位は爺さんの凄み(パワハラ)による生産会社への支配で成り立っていた気がする。

かつてはいいものを作れば売れるという時代でした。いわゆるプロダクトアウト、製品起点です。そして、その次はお客さまの要望を理解し、課題を解決することがビジネスの主流となりました。マーケットイン、顧客起点です。これからもその部分は重要ですが、それに加え、(中略)社会や環境の課題を解決するビジネスが求められる時代に入ってきました。

顧客の課題解決は相手の顔がはっきり見えていますから、なすべきことは明確です。が、社会や環境の課題を解決し、新たな価値を創造するには、顧客との協創やメーカー同士の協力だけでは不十分で、市民やNPOまでを巻き込んだムーブメントにしていかなければなりません。社会起点、価値起点の発想が必要です。

P.121

これはもうコーポレートメッセージみたいなレベルだからあまり意識できない。まぁそうよねぇとは思うけど、上層部でやっててくれって感じ。

安全と品質を確保するには、技術の伝承を個人任せにすべきではありません。組織としてルールを作り、ルールに基づいて教育することが重要です。そのような仕掛けとしてしつけが大切であることを、ひいては、どのような事業においても、組織としてのルールと教育が大切であると肝に銘じました。

P.149

今の部署はプロジェクトチームということもあってか、明文化されたルールもないし、教育も確立されていない。自分としては書き残すカルチャーを育てたい。自分が記憶力弱いので。

多くの企業もそうしているように、日立では、プロジェクトの進捗に応じた売上や利益を計上して事業を管理しています。これは「進行基準」と呼ばれています。ところが、HPEはドイツの会計基準に基づき、プロジェクト終了時に計上する「完了基準」で管理していました。数年にわたる事業であっても、「最後に黒字であれば、四半期ごとの決算が赤字でも問題ない」という意識が強く、業績のこまめなチェックが徹底されていませんでした。

完了基準だと、プロジェクトの初期の段階でコストが発生するような問題が生じても、解決が先送りされがちです。結果として、完了時点で締めてみたら大変な赤字になっていた、という危険性が高まります。そこで、全プロジェクトの進捗、業績見直し、課題を定期的にレビューする会議を義務付けました。マインドの転換です。

P.161

進行基準=ゲートチェックみたいな感じ?プロジェクトで発生する費用は完成するまでの間、都度建設仮勘定に計上するって聞いたけど、完了基準で管理する場合はそれもしないの?

上場会社の経営は、いかに当期利益を増やすか、EPS(1株あたり当期利益)を上げるかです。優良なグループ会社をたくさん連結してすばらしい営業利益を上げています、しかし実際には少数株主に利益がどんどん流れて、当期利益は大したことがない……そんな経営がよいとは思えません。

P.178

ここよく分からなかった。高い営業利益を上げている小規模なグループ会社で高い配当金を支払うことで少数株主がたくさん利益を得る構造があるってことかな。

後者の自律分散型システムには均質性、制御性、協調性という3つの特徴があります。末端のコンピューターに搭載されている仕組みはどれも同じです。それが均質性です。(中略)2つめの制御性とは、末端の各コンピューターが、中央の司令に基づいて動くのではなく、自立・独立して管轄範囲を制御することを指します。(中略)最後の協調性とは、言葉を変えると「ほかに迷惑をかけない」システムという意味です。中央集権型だと、末端のコンピューターのどれか1つが故障すると中央のコンピューターにも影響が出て、結果的にシステム全体が止まってしまう危険があります。自立分散型なら、1つのコンピューターが故障したところで全体のシステムには影響しません。

P.200

システムの話はよくわからんけど、部分的に壊れても全体的には機能し続けることが重要で、それを実現するのが自律分散型システムというやつで、同じ仕組みで動くけど(均質性)それぞれ独立して制御可能で(制御性)障害が連鎖しない(協調性)システムということかな。

共通ERP基盤を構築して経営データを一元管理し、他の共通ITプラットフォームと連携することで、データに基づいて意思決定を行うデータドリブン経営と社内DXの加速に貢献します。

P.206

弊社もERPやるらしいけどすごく大変そう。(詳しくは知らない)

社外取締役の方々は容赦がありません。経営にとってマイナスだと判断したら断固として反対します。事前に重要議題について説明し理解を得ておくといった日本式の根回しも通用しません。ですから、取締役会はいつも真剣勝負で、激論が交わされます。

しかし、だからこそ、取締役会は経営の最高決定期間として役割を果たすことができます。大半の取締役が執行役を兼務し、社内取締役が多数を占めるような取締役会では、執行役の監督の役割も果たせません。

P.213

社外取締役が容赦なく経営陣に意見している現場を見てみたいね。皮肉でもなんでもなく興味あるわ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?