新築物語

今回は初めて新築販売することになったお話です。

買取

不動産業界は実はまだ5年目の私。なので毎回色々と舞い込んでくる案件は初めての経験のお取引も多い。

顧客さまの紹介で、店舗付き住宅で小料理屋さんをやっているご年配の方が、廃業して自宅を売って賃貸で暮らしたいと相談に来られた。

内見に行くと、小料理屋さんのカウンターや厨房は物であふれ、掃除も全く行き届いていない。本当にここでお料理をして出しているのなら、今すぐ廃業にするべきレベルの店内だった。逆に2階の居住スペースには殆ど荷物がなく、でも全く掃除も手入れもしていないカビだらけの悲惨な有様。高齢男性の1人暮らしの実態を見て吐きそうになりながら間取りを取った。

専任で預かる事になったものの、そんなとっ散らかった物件、とても案内に出せる状態ではなかったので、買取保証をつけてとりあえず賃貸に引越ししてもらい、せめて不用品を回収した状態で販売する事となった。

でも高齢男性1人暮らし。お身内はこれまた高齢のお兄さま夫婦のみ。保証会社はなんとか通ったものの、なかなか引越し先が見つからない。それでも、なんとかご希望条件内で賃貸物件が見つかり、引越しもお手伝いし、新生活の日用品の買い出しもしてあげたり。小さな不動産会社は時に便利屋さんになる事も多い。

無事引越しも終わり少し経った頃、金銭的なご事情もあり、相場価格で買い取る事となり、せっかくなのでそのまま売るのではなく、更地にして新築を建てる事となった。

切り離し

このお宅、3連棟の端っこ。真ん中のお宅の方に切り離し承諾を得たものの、すでに反対側と切り離された真ん中のお宅は、うちが切り離したらもう壊れそうな勢い。あまりにも可哀想なので、とにかく丁寧に対応していたら、切り離した後の補強や耐震工事、たっぷりの断熱材や防音工事など、色々と大サービスする羽目に。とにかく弊社代表は計算が苦手。どんどん原価が上がっていく。

新築のプランを進めつつ、お隣との切り離しもなんとか済み、解体が始まった。すると今度は裏の地主が何かと文句を言ってくるようになり、隣接する自分の土地には一切足場も重機も置くなと言ってきた。

筆界確認のハンコ押しといて、後から境界の位置が違うと言ってきたりとにかく最悪な隣人。全然ケンカしてもよかったけれど、はじめての弊社新築を買ってここで暮らしていかれるであろう、まだ見ぬお客さまのために我慢をして、言いたいことは言いつつ笑顔で対応をしたが、心の中では、因果応報やで、と何度も呟いた。

新築販売スタート

そんなこんなの想定外の問題のお陰で予定工期より大幅に遅れつつ、それでもなんとか竣工となり、とてもかっこいい3階建の新築戸建が完成した。デザインや設備にもこだわり、注文住宅並みの坪単価での仕上げ。お客さまターゲットは、30代、小さなお子さまありの年収900万くらいのファミリー。

何もかも初めての新築販売、いつものごとく弊社代表は全く頼りにならず、他社営業さんや司法書士さん、設計士さんに新築販売時に気を付ける事などを教えてもらい、先に契約書と重説も作成した。案内する際のセールスポイントをまとめ、コロナ対策もバッチリ。現地看板も設置し、新聞広告や近所にチラシ撒きをして販売初日を迎えた。休日出勤をして反響を待ったが、業者からの電話ばかりでまさかのエンドからの反響ゼロ。期待外れの新築販売がスタートした。

ご案内

相変わらず反響が来ないある日、現地看板を見た近所の方から見学をしたいと電話があり、やっとはじめてのご案内が入った。とても気に入ったご様子だったが、やたら価格の事を気にしていたのが引っかかった。その後も何度か物件の質問などで連絡を取って、いざ買付となった途端、すごい金額の指値をされた。

ひとつしかない物件を同じエリアで販売されている他社新築と比較され、こんな高い値段設定はおかしいと説教をされた。いやいや、用途地域も道路付けも違うし、2階建てと3階建てでは単純に建物価格が違う。ましてこだわって造り込んだ新築をそこらの建て売りと比べてられても困る。キャッシュで買うからと強気で交渉をしているつもりだろうけれど、

販売価格を決めるのは買主ではなく、誰にいくらで買ってもらうかを決めるのは売主である。

以上の内容を丁寧に説明し、一生待ってもらってもその値段では無理です、と買付を貰う前に笑顔で断った。

でもこの方、どうしても諦められず、弊社が提示した少しだけ値引きした価格で買わせて欲しいと数日後に謝罪の電話をしてこられた。自分なりになぜこの値段がついているのかを理解し、納得したらしい。

その頃には他の見学の方や検討してくださっている方もおり、でも本当に気に入っておられる様子が伝わってきたので取りあえず、買付をもらってから考える事になった。

さてさて弊社初めての新築、誰が買ってくれる事になるのか。この続きは無事決済が終わったら書こうと思う。

さいごに

最後まで読んでくださりありがとうございました。色んな思いがつまった新築物件、ステキなお客さまとご縁がありますように。

それではまた！