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オンラインフェス和文英訳2

【訳文】ペンネーム I am a cat.
(1) One rainy day, walking through Hyde Park, I noticed the Band of Her Majesty's Royal Marines playing drums, bugles, and other musical instruments, drenched. No audience was in sight, yet the band had a fixed schedule. They would never quit and go home until the end of the program, even if no one—or sparrow—was listening. Some may be impressed by the fact, thinking this is the British way.

(2) You took the trouble to show me around Tokyo even though you were busy. I am sorry to say that, however, as I grew up in the country, I was not a bit attracted to the hustle and bustle of the city. Since it was the best time to see cherry blossoms, we could not avoid a massive crowd wherever we went. All this was enough to make me sick and tired. Swans at Nijubashi Bridge were losing their pure whiteness. Cedars along the moat of the Imperial Palace had turned darker, covered with soot.

【オンライン・フェスティバルの感想】
 こちらのご担当は磐崎先生。英文解釈では斎藤先生が「過不足なく」と強調されたが、和文英訳ではそう単純にはいかない。文化の違いもあり、多少の補足説明は必要。ただし、余計なことは書くべきではないということで、そのかねあいが難しい。
 私の読みと先生の解釈にズレがあったのは、(1) の「聴衆は一人もいない」。聴衆はいないが通行人はいて、そのうちの1人から「帰らないのだ」と聞いたのだろうとのこと。I was told などと伝聞にするべきだった。
 今回は大修館様のご配慮で参加者全員分の答案を拝見できだ。おかげさまで気がついたのは (2) で「…もう沢山だ。」と「二重橋の白鳥…杉の木…」のあいだに、つなぎ言葉を加えた方が何人かおられたこと。長々と補足を加えるのには抵抗があるが、K. Mimura さんが Besides の1語でつなぎ、見事に「も」を表現されていることが印象に残った。
 また磐崎先生からは Swans ... were losing their pure whiteness. にコメントをいただけて大感激! 先生から全員へのアドバイスは「コーパスの利用、コロケーションの重要性」「非ネイティブにも通じる英語」「(状況によっては)専門語やイディオムは使わない方がよい」「訳文を音読して、自然にすっと頭に入ってくるか確認しよう」「比喩表現、3つの処理方法」などなど。
【補足その1】 評価について
A: メッセージ伝達および構造上の問題がなく、かつ巧みな表現が使われている。B: 若干表現上の問題はあるものの、主たるメッセージが適切に伝達できている。C: 文法上の問題があり適切にメッセージが伝わっていない。
【補足その2】 比喩の対処法(例「雀一羽聴いていなくても」)
(1) そのまま直訳する(誤解が生じる可能性あり)
(2) 一般的な意味に置き換える「人っ子ひとり聴いていなくても」
(3) 動物(例えばウサギ)のイメージは文化によって異なるので、おなじイメージをもつ別の比喩にする
→ つまり、他の動物を猫におきかえて訳すのはアリということなのか!?

 さらに森田先生が後半に出演され、全員へのアドバイスをいただけた。(日英・英日とも?)翻訳の経験が豊富な先生のようで、印象に残っているのは「読者は誰かを確認する」「文脈を大事にする」「引っかからずに読める文章構成力」「リサーチ力」「AI には真似のできない適切な足し算引き算」。やはり和文英訳には英文解釈とは違った面白さがある!

【訳文提出前に考えたこと】
※みなさんと検討した後に追記するかもしれません。
和文英訳の方針
(1) 和文を読んで読者が描く絵と英文を読んで描く絵がおなじ
(2) 直訳にこだわりずぎず、和文が伝えようとしているメッセージを伝える
(3) やさしい英語で書く(KISS principle: Keep it simple, stupid!)

『伝わる英語表現法』を読んで考えたこと
・英語は日本語よりも「具体的」「説明的」「構造的」
・日本語は名詞中心、英語は動詞中心
・「一事一文」の原則:長い原文を切る、説明は後へ送る、行間を埋める
 → 抽象から具体へ
・構造化(並べる、そろえる):A, B, and C
・文と文をつなげる:接続詞でつなげる? あるいは
 情報構造でつなげる? → 旧情報から新情報へ

提出前の訳文の検討方法
(1) 各種の検索でヒットした件数をみて、自然な表現かどうかを確かめる
(2) イメージ検索も活用して、「英文から描かれる絵」を確かめる
(3) 翻訳エンジンで自分の書いた英文を「和訳」させ、ねらいどおりに読んでくれるかどうかを確かめる

(a) 海軍の軍楽隊
a naval band という一般的な訳語もみつかったが、イメージがわきにくい。動画を検索すると the Band of Her Majesty's Royal Marines(イギリス海兵隊バンド)が有名だとわかり、「これぞ英国流」を体現しているのはこちらであると判断した。

(b) 太鼓を叩いたり、笛を吹いたり
軍楽隊の「笛」とはいったい何か?(クラリネット? フルート? それともホイッスル?)調べると、上記イギリス海兵隊バンドの主力はドラムとビューグルとあったので、筆者の勘違いと考えて、drums, bugles, and other musical instruments のように A, B, and C の形式に並べた。

(c) 雀一羽聴いていなくても
なかなかうまく英訳できずに最後まで考えたところ。even if no one is watching という表現が見つかったので、これを下敷きにした(watching → listening に置き換え)。enダッシュを活用して情報を補足し、even if no one—or sparrow—was listening とした。

(d) そこが英国だ
"Her Majesty's Royal" との関連から the United Kingdom 使いたいと考えて、はじめは this is what the United Kingdom is all about や this is the United Kingdom as it is を検討した。しかし、いまひとつしっくりこないので、もっと簡潔で一般的な this is the British way という表現を採用した。

(e) 田舎者のボク
田舎者には a countryman、someone from a rural area もあるが、ここでは次の the city と対比して the country を使いたい。そこで as I [was born and raised / grew up] in the country を考えたが、能動態であり、より簡潔な表現でもあるため後者を選んだ。(← 必然性がないかぎり、受動態は使わない方針)

(f) 東京見物も...何の興味も持てなかった
原文を読んで、「田舎者」のボクは「都会の喧騒」に興味が持てなかったのだろうとイメージ。the hustle and bustle of the city というフレーズが浮かんだので、情報を補足して I was not a bit attracted to the hustle and bustle of the city. とした。

(g) これだけでも、もう沢山だ。
はじめ This is enough. や Enough is enough. という表現が浮かんだが、これらの英文からは何が沢山なのか、具体的なイメージをするのが難しい。したがって、もっと具体的に All this was enough to make me sick and tired. とした。

(h) 白鳥もうすよごれている
「うすよごれている」とは一体どんな色か? dirty や filthy ではきつすぎる。まだ白いことは白いが、純白さを失いつつあると解釈して、Swans ... were losing their pure whiteness. としてみた。had lost とも迷ったが、よごれている進行中だと考えた。

(i) 杉の木もススで黒くなっている
はじめは上記の白鳥も「ススで」よごれていると考えて、Swans ... , cedars ... , both covered with soot. を検討した。常識的にはそうとってもよさそうだが、原文はあくまでも杉だけにかかっているので、杉だけにかけることにした。また、いくらなんでも杉の木は真っ黒にはなっていないはず。もともと明るくはない色(dark)だが、それがより暗くなったと考えて、Cedars ... had turned darker, covered with soot. とした。

【参考資料】

これぞ英国流! the Band of Her Majesty's Royal Marines の動画


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