『リップクリーム』#320

右ポケットのゴールデンペア、眼球担当は目薬で、こちら唇担当。
冬場の乾燥に悩まされるのは外気に触れる皮膚全てに言えることで、そのなかでも特に厳しい部位、ドライエスト、そう最上級に活用していいのかわからないドライのモストなところのひとつ、唇。ワンオブ。
とはいえリップクリームを力を入れて選んだことはこれまで無くて、いや、高校の時に一度だけあるか、とはいえ、私の唇に塗り重ねられてきたほとんどの厚みをメンソレータム(ロート製薬)とメンターム(近江兄弟社)が占めている。あえて使い分けているわけではなく、さっと緑色のパッケージを手に取った時にたまたまメンソレータムであるか、メンタームであるか、その偶然性によるものでしかない。2つの違い?それもわかることなく、確かな保湿力と使い勝手の良さと安さとで選び使い続けている。
高校の時の心変わりというのは、ずっとうちにあるからって使い続けてた(言うていまほど、持ち歩いてもいないし家で使うことも滅多になかったけど)緑のリップを、ダサいな、と漠然と思ったことから起こった。まずパッケージについて濃い緑のババくさいデザインだなぁと思ったのと、自分の持ち物に「家からのお下がり」というか「親の選んだもの」をそのまま使っていることに、恥ずかしくなったのと、そうして、持ち物・身に付けるものは自分で選んでプライドを持って生活していこう、と、青臭いことを思った若い時期だった。青臭いけど、大事な時期だった。ちなみにそのとき手にしたのは、黄緑と白のボーダー模様で、匂いはなく、ちょっとスリムなやつだった。200円くらい。ちゃんと使い切った。と思う。次はメンタームだった。デザインの価値観は、ニュートラル、定番、シンプルなものへ収束していった。
その価値観が今にも続いている。
リップクリームを使い切ることと、目薬を使い切ること、これは「失くさずに使い切る」こととしてとても難しい。ついにいま、「出し過ぎると付け根が出ちゃう」ところまで来ている。いちおう、これまでにリップクリームを使い切れた経験はないことはなく、ある、あって、付け根のプラスチックのところまで行くとおちおち塗れなくなることも知っている。プラスチックのはドーナツのような輪っか状のパーツで、芯の回転棒の出し入れを担いつつクリーム、そうクリームを芯棒が削ってしまうことないよう重要な役割を担うドーナツ、そろそろ対面できるのではないかと、特に楽しみというわけではないが労ってやりたい気持ちで待っている。

#リップクリーム #181103

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