『鶴見』#326
わかるひとには、なぜ326で鶴見としたのか、わかると思う。でも、わかるひとはこのノートを読んでいないので、ただの、ただの鶴見の話。
近いけどちょっと遠い、隣の街。
私が住む川崎市川崎区と市境界線で接してお隣、横浜市鶴見区。鶴見川を挟み込むところと挟まないところがある。ずっと子供の頃は、鶴見川の真ん中が境界線で、東京湾まで至るのだと思ってた。どうやらそうではなくて、横浜方面に歩いたり自転車で行くと、川を渡る前から鶴見になることがあって、おやっと思って調べたら、川が全てではないとわかった。ひとまず川の向こう側はすべて鶴見区になるけど、川崎区側にもいくらか鶴見区であるゾーンがある、という感じ。
鶴見が全国的に名を知られる機会があるといえばあって、事故が起きやすいとかそういうバッドなことでなく、新年初めの一大イベント、箱根駅伝。ここで鶴見という地名は幾度となく声高に叫ばれる。大手町でスタートする一区の選手が花のエース区間と呼ばれる二区の選手とタスキリレーをするのがここ、鶴見中継所。まだ序盤も序盤、20名ほどの選手たちが団子になって駆けてくる場所、熱気もすごい。それから1日経って復路、大勢が決してしかし先頭争いやシード権争いなど局所的にデッドヒートが繰り広げられる九区から最後のアンカー区間である十区へのタスキリレーが行われるのもまたこの鶴見中継所だ。必死に走ってきて、後は頼んだ、と送り出す地点、タスキを受け取って、後は任せろ、と走り出す地点、見ていてわかりやすいドラマはあまりないけれど一校一校でものすごい熱量が交換されている。その、鶴見中継所は実は、鶴見川のこっち側にある、先ほど書いた、川崎区側の鶴見区ゾーンにある。ちょうど平行する沿道で停車スペースとして道が長く広く取られていることから、いい中継地点となっているのだ。いちおう鶴見川の向こうでも、そんなスペースは区役所付近にあるはあるけど、なぜかこちら側にある。無意識のうちに川崎区民として、“こちら側”を強調してしまうのはご愛嬌とお許しください。
そういえば鶴見駅の近くのホテルだか駅ビルだか、その建物の名前がたしかシークレインというもので、昔は「シーク」「レイン」の二語構成だと思っていたのだけれど、数年前にまた訪れた時にハッとしたのだ、「シー」「クレイン」なんだ、と、見る、鶴、と。その英訳アレンジができるあたりちょっとだけ、羨ましいなと思った川崎区民。
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