『日比谷』#36

日比谷とは日比谷公園であり、有楽町駅の銀座側じゃない方であり、
箱根駅伝最終区のラストスパートでシード争いが繰り広げられる日比谷通りであり、地下鉄に名を冠することが先に記憶に残った日比谷である。
私にとって。
それが今日、有楽町と新橋の間にあり、霞ヶ関および“霞ヶ関”が近いというか隣り合っていることがわかりそして日比谷図書館という日比谷公園内にあり三角形平面で選書棚がよく居心地のたいへんよい場所を知った(いや乾久美子さん設計の「日比谷花壇」もあるし、先ので以上というわけではないです。ないですが情報は豊富ではない)。
図書館を訪れたのは大雪の翌日、あわよくば日比谷公園で雪遊びをなんて思っていた。公園には遊べるほどの雪があった。あったが、そこは日比谷だった。そこは、帝国ホテルが眼前にそびえ、背には国会議事堂が控え、そしてここはかの鹿鳴館があった、日比谷という地だった。はしゃげる気配皆無。あと、朝から快晴だったこともあり通路の雪はべしょべしょ、花壇は立ち入るべからず、手の届く綺麗そうな雪はベンチの上に残るばかり。そもそも平日昼間の日比谷公園である。家族づれのパパさんやママさんがいるでもなく、おじいさんおばあさんが休むでもなく、スーツで一人闊歩する方達が通るばかり。
大人しく図書館へ入る。ちなみに、図書館へ入るまでの葛藤は(ほぼ)なく、広場へは出ずに新橋側から直登。大嘘プロローグ。
入って、あらためて「三角形平面」の面白さがあった。角から入り、センターに周り階段があり、2,3階は入口側から向かって2方向、4色の“ウイング”がある。私らは社会系のオレンジの窓際席で外を眺めながらそれぞれ読み耽った(ただ、読んだ大半は吉田秋生さんの「バナナフィッシュ」である。すっげえ作品だった。名作と呼ばれるだけある)。
夕方には一度抜けて、温かい飲み物を手におやつを食べた。チーズ混ぜ込みのとオレンジ添えのと、2種類のブラウニー。ベンチは相変わらず濡れていたので一人がけの、白いだるまみたいな石椅子に腰掛ける。暗くなるにつれて寒さはいっそう強まる。人影はほぼない。図書館の中はといえば昼も夕方も夜も、自習机はどこも9割埋まっていて、熱量が高い。比べて窓辺はやや落ち着いている。たっぷり居座りどっぷり本を読み、たいへんいい時間を過ごした。ただひとつ不満があるとすればそこに、Saul Steinbergの「THE Inspector」をはじめ彼の著書が一冊も無かったこと。

#日比谷 #180123

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