『寒い』#54
朝6時から外気とおよそ差がない場所で座って待つ、堂内で周りに人が所狭しと座るが空調は無い、隙間風が吹けば気温の差を感じる背や足が震える、そんな時間があった。それでもそれは9時までの3時間ばかり。およそわずか180分のこと。しかし寒い。
今年の冬は最低気温が1度前後の日が長くあり、言葉と内容は私の主観になるが「きちんと寒い」冬だと感じている。朝夜は手を出していればグングンと冷えて指先がキンと固まり、耳は頭の中心に痛みを伝える。部屋の中でも暖房をつけなければ足の指先は凍え、爪に見る血色は青黒い。温度計はだいたい7度くらいを指す。寒い。
身体が熱を生産していても、運動中のものとはまったく異なりそれは生命機能維持をするだけで、意識に「寒くない」と感じさせるほどではない。夜のランニングの途中からは足先にまで血が通うのがわかり背中はしっとりと濡れて、かぶったニット帽のなかでは頭頂部の空気に温かみを感じる(耳はニットが伸びているので並)。走った後のストレッチでは皮膚表面の冷たさに対して内部の筋肉とか骨周りは柔らかく伸びていて、せいぜい鼻水が垂れることで「気温は冷たいんだな」と知覚する程度。私が「寒い」と感じるときは中に入って支度をしてシャワーを浴びようと浴室に入ったときまで長い間隔がある。冷えた浴室の床に感じる寒さだ。湯を浴びれば暖かい。洗い終えてシャワーを止めて身体を拭ききるまでは無論、寒いが。そこまで。
時々人からも言われるし、私自身でもそう思っていることだが、基本的に薄着。無印良品の、2着1500円の半袖Vネックシャツに、襟シャツあるいはカーディガン、後はコート類を羽織って終わり。冬に何度名前を聞くかわからないヒートテックは出番がないし持ってもいない。夏冬問わず基本的に汗かきなので、熱を産生されても弱る。どちらかといえば筋肉質で、四肢が短いため着ぶくれしやすいため、腕を覆う袖は2枚まで。厚さ的にはヒートテックは適当なのかもしれないが難だ。スキーをするときや、じっと外での現場監理みたいなときはサーマルを着て腕にもう1枚重なるが4枚以上にはならない。
だから、というわけではないが私が「寒い」と言うことは許されない。「ほれ見たことか」と「だから言ったろうが」と言われては薄着ポリシーも形無しだ。私が「寒い」と言ったときに「珍しい。じゃあ、よっぽど寒いんだ」と言われることも稀にはあるが、それ以上着るものはないのだから「堪える」以外ない。
私の最も寒さに弱いポイントは足の指先だ。鼻と耳も弱いが、靴と靴下に関しては大した対策も取れず、気温の低い場所で靴を脱いでいるようなことがあればたちまち感覚を失う。ここ最近は足先の冷え性が加速度的に進行していて、温まらない感じを常に抱えている。唯一、冷えていないときはランニングをしているときで、その時間以外は常に保冷剤みたいな10本である。靴の中には、指が足裏に「寒い」と思わせる珍妙な感覚器官がある。立春を過ぎてなお寒い日々はこたえる。
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