『無風』#217

テーマとしては珍しい、気がしてる。接頭辞を含む二字熟語。単なる「風」ではなく「無風」。これでも単語だからアリなわけで。無風、夏の季節には特に「あっ」と頻繁に感じる気象状態。
なぜ、他の季節よりも「無風」を頻繁に感じるかって、先に種明かしというかネタバラシというかオチを先につけてしまうなら、夏は風が吹かなければ暑いからだ。
風が吹かなければ暑い。風が吹くと、気温が高くたって(しかし35度以上になると風でも「暑い空気が鬱陶しい」と感じてしまうので一概に言えなくて困る)いくらか肌に涼感を感じられる。とはいえ、建築環境で習った内容の一つに、速すぎる気流を浴び続けるのは不快感を感じるので風速は0.5 m/sにするのが望ましいとされる、というものがある。台風の風速は20とか30 m/sだっけ、それ浴び続けたら不快どころかその場にいることも厳しいわな、瞬間だからまだしもって、って、風が吹くほうの話をしてはテーマをそらしてしまう。吹き飛ぶ。
夏場の夜、海沿いに住んでいたらきっと違うのだろうなぁと思う、都市部に住んで住宅地の中、深夜に窓を開けたところで風を得ることは難しい。せいぜい窓辺の空気が入れ替わるくらいなもので、床にべったりと眠っているわれわれの肌を撫でるような風は本当に貴重なものだ。目が覚めているときにそんな、風を肌に感じたときには「あぁありがたい、、」と嬉しくなって眠りにつきやすくもなるというもの、吹かないのだから寝苦しい。いま日本の家に、無い家は無いだろうと思うのは扇風機。一家に一台はもちろん、個人の部屋と、団欒の部屋とにそれぞれ一台ずつあったっていい。最近は羽のないサーキュレーターなるものもあるので必ずしも扇風機とは言わない。送風機か。エアコンと区別して、まぁ、送風機。あるわな。でもアラサーの私はどちらかというとまだ扇風機の方が言葉として馴染みがあってポンと口に出すときは夏の送風機全般を指して扇風機と言う。
夏の無風の辛さが、昼は勿論、夜になお苦しめられるというのが誠に難儀するところ。春や秋なら気候自体、ちょうどいい塩梅で風が多少吹こうが吹かなかろうが気持ちになんら影響がない。花見で吹く突風だけは勘弁してほしい、か。冬はといえば常時寒いわけで無風の方がありがたい、けど、ィンとした空気(誤字でなく、キン、とか、ピン、でなく私的に冬は「ィン」なのです)で張り詰めるので多少風があってもと思うけれどやっぱり寒い。どちらがありがたいということもなく、夏の気流の有無はかなり心情に影響する。
いま読んでいる外山滋比古さんの本で比喩について書かれているのだけれど、数えられるものでもない風にも「無い」が使われるのってなかなか面白いこと。風が吹かない、風吹かず、なら不風でもよかろうと思うのに、有る無しなんだよなぁと、ただ、面白く思う。
今夜もまた暑い。

#無風 #180723

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?