『紙袋』#111
大人の象徴、として考えても差し支えないのではないかな、と思うのだ。大人の嗜み。
プレゼントにはお洒落な紙袋、手土産にも紙袋、なにかをひとに贈るとき「できれば紙袋が」と好むようになった。このあいだ自分でも驚いた。1000円弱の手土産にと、駅ナカのせんべい屋さんに寄った時のこと。いろんな種類があって、豆菓子だったり季節柄で桜味のあられがあったり、30種類超あったはず、小袋で3つくらいにしたらちょうどいいかなと思ってレジに持っていって「手土産に渡したいので、贈答用の袋って何かありますか」と尋ねたところ「こちらのビニールの当店オリジナルの袋がありますが、いかがですか」と見せていただいたのは、結局というか、プリントのビニール袋、カサカサ言う。「できれば、紙袋が望ましいのですが」と食い下がってみたが「ご用意ありません」とのことで、悩んだ。そのころはちょうどホワイトデーの時期だったこともあり、店頭には縦長の紙袋にゼッケンのような感じで「HAPPY WHITE DAY」って文字と花柄が描かれたバナー?が被さった福袋ふうのがあった。はじめには、値段もちょうど良くて良いかなと思っていたけど、お渡しする先方は好き嫌いがややあって抹茶とかあんこがダメで(だったら和菓子とかせんべい選ぶなよって感じだけど、アソートにできるのがそこしかなかって)、中身がわからないのはリスキーかなと思ってスルーしていた。そこで、選んだ3つと、そのホワイトデー福袋を購入して、中身を入れ替えて、ホワイトデーギフトってわけではなかったのでバナーを外して手土産にした。妙な手間をかけてしまったけれど、それでも紙袋にきようって意識がはたらいた。
子供の頃とか、というかおそらくつい最近まで、紙袋ってありがたくない買い物袋だと思っていた。雨が降ったらしなしなになるし、口が大きいから中身が濡れるし。底マチが大きいと歩くときには脚に擦れたり、往来の多いところだとひとにぶつけてしまいそうで気になる。あと、大したことはないが、ビニール袋に比べて少しだけ重量があるのとヒモが持ちづらいのと、そして、カバンの中にそのまま入れることが難しいから基本的には手に持つことになるのが面倒くさかった。とにかく買い物袋はビニール袋一択だった。
それがいま、もちろん買い物袋であればビニール袋か、あるいはカバンに入れてる薄手のトートバッグに入れるとかするけど、贈答とか手土産の機会ができて(機会ができたわけではない、自分の振る舞いのなかに「贈答」と「手土産」への意識が興ったのだ。これは十中八九、彼女の振る舞いに引っ張られたところ)、紙袋でもらって持ち歩く機会が増えた。
いまや自分の部屋のなかには紙袋のストックがあって、なにかを渡す予定があったり袋を期待できないものを用意するタイミングがあったりすると、自前の紙袋(自前の、って間違ってる気がするな)を持って出ることもあり、大人の階段をひとつ上がったのだろうかと、思わなくもない。
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