『換気扇』#121

いったい換気扇について何を書こうというのか。自分に問う。それはだな、と自分答う。換気扇はいつスイッチを入れていつスイッチを切るものなのかと。
浴室の換気扇は、子どもの頃から習慣的には「入浴中とその後数十分まで継続(タイマー)」で入浴していた。換気扇を回さないと浴室内が湯気で真っ白くなってしまうし、湿気が溜まりっぱなしになってしまうからということで回しまくっていた。父とか妹に至っては、入浴後にさらに回して120分とかそれぐらいまでひねっている。そのうちどこからの空気を排出するのだろうって感じである。脱衣室をも換気できそう、というかそれが狙いか、いや機能の狙いはそうかもしれんが、家族の狙いは特にないだろうな、とりあえず長めに回しとく、みたいな。わたしは、つい最近去ったばかりの冬、その初頭から換気扇を入浴後に回すことにした。理由は、「寒い」ことと「湿度を残したい」ことと、「静寂が欲しい」こと。この三つが思い浮かぶ。
冬場、外は寒くて家の中でだって脱衣所は特段暖めていない。最近は脱衣室にヒーターを置いているけれど私はなんか、不在時(入浴中)に暖めておくことに抵抗があって使っていない。湯船に浸かれば温かいし、身体を温めてしまえば脱衣室の寒さは気にならない。とはいえ、湯船に浸かるまでの裸の時間と、湯船に浸かっていても出ている肩や頭が冷えるのも嫌だ。入浴中に換気扇を回していると、上に溜まっていく温かい空気が抜けていって、脱衣室や窓の隙間から冷たい空気を浴室に取り込む。しかも乾燥した空気だ。寒さの理由ではこんなところで、湯温だって下がるしやめとこ、というわけ。二つ目の理由の湿気については特に今ぐらいの春期間になると顕著で、換気扇を回しながら入っていた時には起こらなかった、湯船に浸かっている時の発汗、これが違う。ただ乾いていくばかりだった肌は、体内からの汗がぽつぽつと浮かんで顔面はつうつうと伝って顎から滴る。浴室の温度なのか湿度なのか、何が作用しているのかわからないけれど、代謝が行われているんだなぁと実感できる。スポーツでもそうだし、サウナで汗かくことがとても好きなので嬉しい効果。汗だくで止まらない時には水シャワーでザッと冷やしてこれがまた気持ちいい。週に2度くらいの入浴で、気持ちよく深夜を迎えられることはとても快い日常体験で、普段は浸かりながら本を読む。そのとき読んでいる本を持ち込むこともあるけれど、リラックスしたいのと脳をふにゃふにゃさせたいのとで、わりと多いのが川上未映子さんの食エッセイ3部作『発光地帯』『魔法飛行』『安心毛布』、この3つの文庫どれかを持っていくこと。リズムがよいのと分量が見開きで収まるくらいなことと、イメージが浮かぶとも浮かばずとも愉快であること、特にこの最後の理由が大きい。何も考えなくて、読むだけでいい、みたいなところ。読点や句点が少なくて形式的な息継ぎのない、「見開き1ページが一文で書かれている文」が特に、音と文字を取り込んで、脳に溜まる雑事を排出するのにすごくありがたい。そんなときに、換気扇のキーンとかフォウーンとかいう音が聞こえると興ざめなのだ。静かであるのがいい。換気扇が私の、換気を阻害することがあってはならん。
てなわけで、入浴中は換気扇を回さず、出た後に20分くらい回して湿気を抜く利用方法がわたしのなかで習慣化している。
ちなみにトイレは入る瞬間から当然回す。当然。

#換気扇 #180418

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?