『溜まる』#175
「ためる」という言葉には漢字によって少しずつ意味が変わって来るけれど今回は「溜める」。
漫画のあひるの空で、トビに対して唐沢さんが言った言葉が強く残る。「同年代に自分より上手い奴がいるのがそんなに許せないか?」と唐沢さんがトビに言う。ムッとした顔で「別にそんなん気にせんワ」と答えるトビに言ったのは、「怒りを開放せずに溜めろ」「怒りを溜めるうちに身体のなかであ物質に変わる。麻薬さ」と、要約したけどこういうもの。このメッセージは怒りに限ったものでなく悲しみや悔しさ、負の感情とされるものものにも同じように言えて、こらえて溜めるうち、フラストレーションからモチベーションやコンセントレーション、つまり動機や集中につながる。話中では、実際に脳内物質が出るとかドーパミンが云々とかではなく、カッとなってキレやすいトビへ我慢を促すメッセージだったけれど、バスケで「シュートがズバズバ入る」とか「相手の動きがよく見える」とか、いわゆる“ゾーンに入る”ことに繋がる暗示でもあると、唐沢さんはモノローグ的に語る。怒りを溜める。
一方の私はと言えば、怒りとか憎しみとか、強い感情を持つことがあまりなくてそれ自体にはピンとこないけれど突発的に感じる「不条理への怒り」と「他者の苛立ちや不満感に誘発される苛立ち」はあって、自分の感情に戸惑う。怒り慣れてないのに、そこでカーッと苛立ってしまったときに感情の納めどころが見つからなくて、頭が沸騰して途端にスポンジヘッドになってしまう。仕事中だと本当に大変で、しばらくまったく思考ができなくなる。一方で、ときどきは収められると言うかまさにうまく溜められるときがあって、そんなときは本当にキレキレに動けるし考えられる。テスト前とか、何かの本番前、緊張感の収め方については心得ていてうまいこと集中力と脳活性に役立てられる。
溜める、この漢字からして、水を留める。緊張感や怒りは、地面から湧く温泉かあるいは間欠泉か湧き水か、そんなイメージ、内発的なところ。かたや、溜める、を使う対象の例にもうひとつ、よく使う言葉がストレス。これは内発的な苛立ちを伴いながら、抗いようのない降雨のような、それはまっすぐざあざあ降るような要因もあれば暴風雨のように四方八方に叩きつけられるのもある。でもこれらはなんとなく、傘をさすとかカッパを着るとか、対処法があって守りきれたり帰ってからシャワーを浴びたらスッキリする感じなのだけど、難しいのがパラ降りや霧雨のとき、傘をさす気にはならないけれどしっとりと濡れていくタイプのストレス要因、これだけは溜めてはいけないなと、思ったのが最近のこと。つまるところ勉強時間の確保が難しくて、溜まってきている。手付かず部分がたっぷりと。これは我慢より発散。
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