『餃子』#56
練って包んで焼く、食べる。ニラやニンニク、生姜に白菜、そして挽肉を混ぜたタネが主なもの。そして天津飯とは兄弟弟子の関係にある。餃子。
妙な話である気もするが、中学生になるくらいまで、餃子に関しては「餃子である」以上の感情も以外の感情もなく、「そういう見た目のそういう味の食べ物」だった。スーパーのチルドのか冷凍のか、それらを家で焼いた餃子しか食べたことがなかった。付属のタレを、付ける量が多ければしょっぱくて、少なければ小麦粉とひき肉の味、というなんともそっけない味覚だった。
中学生になったころ、ドラゴンボールへの関心が強まった。そのころちょうど、赤いカバーで判の大きな完全版が続々と出版されていたころ。出るごとに買って読んだ。悟空とブルマが出会って、亀仙人のもとでクリリンと修行をして、天下一武道会から冒険の旅へ、そして2回目の天下一武道会である。亀仙人の一応のライバル、鶴仙人の弟子2人が登場する。エースで体術も精神も強い天津飯(テンシンハン)と、超能力を使う餃子(チャオズ)だ。もともと、ドラゴンボールについては主要登場人物やストーリーは知っていたので、チャオズについても知っていた。白くて小さくて、力は強くなくてキョンシーっぽいキャラクターと。天津飯との強い絆と優しさ・正義感の強さが快い。天津飯が相手を圧倒するときと相手にやられるときに「天さん!」と、コマの間を取る。安堵の「天さん!」、恐怖の「天さん!」こうして、天津飯は天が苗字・姓なのかなって感じがしてくる。チャオズはといえば、「チャオズ!」である。シングルネーム(?)だ。餃子、だけが表記されても脳内は「チャオズ」と読む。
そんな最中、私はラーメン屋や中華屋に行くようになり、餃子の多様性を知る。ニラやニンニクの薬味が効いたもの、肉の脂の旨味とそれが染みた白菜の味わいに満たされるもの、シソが入ってさっぱりとしたものやチーズが入った変わり種のもの、などなど味はもちろん、皮がもっちりしたもの、一口に入れるには難儀するが口いっぱいに満たされる大きなもの、そしてカリカリに皮が揚げられたものやグラグラと煮立った出汁で茹でられた、今の季節はハフハフと食べたい水餃子と。奥も深ければ間口も広い。タネを皮で包んだもの。
ギョウパ、と称して楽しむホームパーティでは何がいいって、コストの安さと量の多さはもちろん、過程にあり、家庭にある。餃子の多様性は家庭でさらに膨らむ。よくぞ包まれたものだととみに思う。
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