『なべしき』#343

ひらがなで書くと混乱するけど、鍋敷き、食卓に熱い鍋を置くために敷くもの。うちではいま、グラタン用の薄い板を二枚並べて使っている。7ミリくらいの厚さでA5判くらいの大きさで、ぐ〜チョコランタン(予測変換に出てきた)とアンパンマンに出てくるキャラクターの顔が焼印で押されているもの。ぐ〜チョコランタンは見ていた頃の記憶はないので、キャラの顔はわかるけど名前が思い出せない。じゃじゃ丸ピッコロポロリ、の歌の並びはわかるけれど、いま食卓にある二枚に押された顔が、誰だかわからない。わからない顔の上、鍋はグラタン用の板に置かれる。この間までは新聞紙だった。
熱い鍋が置ければ、下に敷く物はなんだっていい。実際のところそうだ。新聞紙だって、雑誌だって、フローリングのサンプルだって用を満たす。そういえば友人が一人鍋をしたときに手帳を敷いたらしくその手帳に書き込んでいたペンがフリクションボールペンだったがために全部真っ白になってしまった、という恐ろしい話を聞いたことがあるな。敷物の耐熱温度は複合的に考えておきたい。カラー写真の薄い紙の表紙なんかは鍋底にぺりぺりと貼り付いてしまうんじゃないかと思えたり、それなりに気を使う。
そうは言っても、やっぱり、「あぁ、これはなべしきだね」と言えるズバリななべしきプロダクトを敷いた過去はかなり記憶を深掘りしないと出てこない。唯一いま思い出せるのは小学生の頃に藁縄を渦巻き状に巻いて作られたなべしきを使っていたことだ、藁縄の薄黄色に加えて赤色や緑色の平べったい布紐が編み込まれていて、原始的で素朴な藁縄なべしきとは少し、一線を画していた。それもいつからか見かけなくなり、しかも、というか、そもそも、冷めないようにと卓上IHクッカーやあんかを置いて鍋物を食べるようになって、ただ敷くだけのものはなかなか出番がない。
飲食店に行ってみれば、さすがに新聞紙や雑誌を敷いて鍋を置くこともなく、コンロがあれはコンロを使うし、置くにしてもきちんと純正なべしきプロダクトを使う。家庭用のなべしきは、多数に求められるものじゃなくなって縮小を余儀なくされるかもしれない。けど、贈り物や上等な店舗で扱われる市場は確実に残るだろう、和傘や草履がいまも生きているように、ニッチで代用が効くものであっても地道に作り続けられるであろうものとして、なべしきってあるよなあ代表的だなあ、と感心している。代替可能な単一機能のプロダクトはこれからどうなっていくのでしょうね。

#なべしき #181126

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