『西』#240

開いた窓からこんがりと、夕日で焼けた空が、見える。部屋の二つある窓のうち、大きい方は腰高から天井くらいまで高く、両手を広げても届かない幅で、1218サイズなのかと思われる、茶色いアルミサッシ。網入り。
夏場に本当に暑い。エアコンはない。あっても一人じゃつけないタチなので、ただただ汗をかく。昼を過ぎて下がってきた太陽がごんごんと陽光を注いでくる。遮光の白いレースカーテンを常閉しているけれど窓台とサッシが受けて放射する熱は室温を容易に35度以上まで引き上げる。夏場の湿度で60%を切れば御の字ではあるが35度以上の室内では乾き方向の空気であってもやはり冷却装置は働くもので、腕や太ももや首はポツポツと汗を噴き出して関節では滴らんばかりにため池ができる。
それでも大きな窓から夕焼け空と、隣家が低いので向こうに見える屋根たちとアンテナはたぶん私の原風景の一つだろうな、西窓から見る夕空。
雲がかかれば「明日は雨か」と思うなどする方角なれど、そのときに西で雨が降っているかといえば必ずしもそうとは言えず、ただ、広く雲がもたれているだけ、という場合が少なくない。いまや天気予報やニュースでもなく、SNS上、主にTwitterであるが、西方の友人の、インドではなく、関西近畿などに暮らすひとの投稿を見ると天候がわかる。天気予報で拾い切れない空気の感じとか雨と雲の動きを下から見た様子とか、こちらに到達するとまたどんな天候に変わるかはわからないがおおよそ予想がつく。偏西風で流れる空気はTwitter空間に位相を変えてこちらまで届く。
今年の夏は台風や豪雨、地震の影響で日本のあちこちで災害が起こったがとにかく今年は関西に猛威が振るわれたわけで、テレビの尺では各地の災害状況が多すぎて報道し切れていないように見受ける。いつどこで見た文言か忘れてしまったのだけれど、テレビ離れの進む原因は、テレビの尺に対して得られる情報や享楽が、ネットや動画サイトに比べてはるかに時間対密度が小さすぎるためだ、って話があって、それをリアルな形で納得したのが今夏の災害情報だった。テレビでは10分間で、二つか三つくらいの現場とコメンテーターの喋りがあるくらいかな、それもいち地方のみ。ネットニュースとかを拾い読みしたら10分間あれば各地方の災害情報を概観することはできる。情報を、流れてくるものをただ受けるか、選択して取りに行くか、って違いがあるので当然なのだけれど。偏西風。
三階の西窓からじゃ、最寄駅の高い電波塔くらいまでしか見通せないけど、どうか平穏に、平成が締めくくられるよう願うばかり。

#西 #180815

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