『絶対値』#352

中学に上がると、小学生時期に知っているようで知らなかった、あるいは、ゼロより低い数字、という、気温由来の認識で定義抜きに知っていた、マイナスの概念を習う。数学における負の数、負の整数、など、基準とするゼロ、原点からプラスの方向とは逆方向に数える数に、符号としてはマイナス、−を数の前に付ける。プラスとマイナスの違いを把握し、「−800円の収入」を「+800円の支出」と言い換える言葉遣いを習い、数直線の読み方と使い方を「右方向は増加、左方向は減少」と学び、そしてその後に登場するのが『絶対値』という概念。中学生当時にかなり苦戦した記憶がある。先の春に中学校に上がる生徒に絶対値を教えながら、どう伝えたら分かるのだろうかと自問しながら今日、絶対値のことを考え直していた。ものを理解することは、解き方を覚えることではない、というのは高校3年で同級生から三角関数の加法定理を習ったときに知ったことだったけど、それと同じことが起きたのが今日。
自分の中学生時期、どうにも絶対値というのが理解できなかった。言葉のイメージからギリギリ、「+3も、-3も、絶対的な値は数字の3だから、絶対値は3」「|3|=+3,-3」である、という感じで納得していた、自分をそう納得させていた。ただ、そうなると、問題で「絶対値が3より小さい整数を答えよ」というときに、考えることよりも反射的に「ある整数<|3|」の数式を思い浮かべて、よくわからないままに-2,-1,0,+1,+2の5つを並べることになる。イメージより先に、答えを覚えてしまうような感じ。それって、絶対値を理解しているんじゃなくて、絶対値を使った例題のパターンを暗記して転用して問題解決しているだけの状態。だから、絶対値って何か、と聞かれたときに「プラスとかマイナスとか符号を外した数字のこと」と、覚えている答えの取り出し方だけしか言えない。300ちょっとのノートを書いてきたうちでも、言葉の定義に遡ることは何回もあって、その言葉の核である意味を理解・把握して初めて、言葉の幅広い使い方を楽しむことができるとわかって、この今回の絶対値についてもそう、絶対値とは「数直線上の、ある点(ある値を示す点)と原点との距離」のことだ。だから、絶対値が3であるならば、原点から3離れた位置にある点、+3と-3が該当し、+3の絶対値は3で、-3の絶対値はこれもまた3であると言える。そして距離にマイナスは無く、「原点からいくつ離れているか」ということなので、必ず正の数となる(0の場合は除く)。
ある概念には、抜き差しならぬ関係の意味があって、その意味があるから理解可能になる、いくつもの別の概念がある。約15年が経過して、やっと絶対値の概念を更新することができた。
その絶対値、いまでは「|x|」(xは数)という縦棒で挟む表記はしなくなったらしく、(「表記はなくなりました」)のような注意書きもなくて、中学生には必要なかったもんなあれ以来使ってないもんな、と変に納得をした。

#絶対値 #181205

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