『漕ぐ』#21

自転車をたくさん漕いだ7時間、その日から一日明けて私の左手薬指の付け根、あの鉄棒とかでよく擦れるとこ、マメができた。小さいものながら「おおー」とニンマリしてしまう。長い登り坂を立ち漕ぎするときに、脚で回すだけでは脚がもたない(この、「(脚あるいは腕が)もたない」という使い方、筋持久力使う類の運動をしてる人には伝わると思うけど、そうでない人にも伝わるだろうか)ので、ペダルに足を置いて立ち上がった状態から、腕でハンドルを引き上げるように、身体を突っ張り棒のようにして踏み込む漕ぎ方で、なんとか止まらずに登りきったのだった。脚で漕ぐのと腕で漕ぐのと(あと肩を回しても漕いだが割合は小さい)を、使い分けたおかげで速く漕ぎ続けることができた。
そんな自転車の他、漕いで進む乗り物はいくつかある。たとえば船。そもそも漢字にさんずい(「さんずい」って打ったら「氵」が出てきた。すごい)が付くので初めに挙げてみた。カヌーやカヤック、ボートなど基本的にはオールあるいは手で水をかいて水上を進む乗り物。カヤック(1人乗りで、オールの棒の両側に水かきがついてる)には数ヶ月前に、友達に誘われてやってみた。奥多摩の穏やかな川。入門編で、オールの持ち方・動かし方を陸上で習ったのち、川に出て実践。これが難しかった。前情報で、体幹を使って腹筋背筋はもちろん太ももやお尻も使って漕ぐんだと聞いていた(そして身体のスタイルをよくするのにとてもよいと)。それがやってみてどうも腕や肩ばかり疲れる。水かきを水面にほぼ垂直に、水を跳ねさせず流れに逆らわず差し込む。水かきで水を後ろへ押す。反対も同じように。初めのうちの動作を部分的に抜き出せばこんな感じ。しかし肩周りが疲れるし、何よりうまくまっすぐ船を進められない。くるくる回る。川の流れは穏やかでも一様でなく、漕ぐたびに船の動き方が違って船があちこち向いてしまう。悩むうち、そのあとにコツを掴んだ。茂木健一郎氏に言わせれば“思考の補助線を引”けた。真っ直ぐに船を進めようとバランスとって水をかくのをやめた。水中に差し込んだオールを軸にして、足の踏み込みと腹筋背筋のねじる筋肉を使って、進みたい方向に船の向きを固定した。船の向きを腰から下で固定して、腰から肩と腕を経由してオールをねじり・回し・水を後方へ押し出す。こうして私は、カヤックを腕で漕ぐ、のでなく、カヤックを腰(全身)で漕ぐことに成功した。漕ぐ道具(身体)を、腕だけでなく、身体全体に広げることができた(うーん、書きたいニュアンスはもっと「漕ぐ」のは「全身」と直接的な感じだったんだがうまくいかん。誰かいい感じの書き方あったら教えて)。
さて他の乗り物では、ブランコも漕いで乗るものだ。脚の曲げ伸ばしがブランコの回転運動に作用するのはなかなかじわじわくる変換だと思わないかねどうかね。と書いていま、ハッとして確認してみれば千文字をゆうに超えていた。
こうして書き連ねている電車内、座席は暖かく、つい先ほどまでぐっすり眠っていた。気づかなかったのだがどうやら私は、ウトウトとして後ろの窓枠に頭を勢いよくぶつけて電車内に音が響いたらしい。隣の連れ合いから後から聞いて、今更何をなタイミングで恥ずかしくなった。船は眠気でも漕ぐことができるものだった。

#漕ぐ #180108

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