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進化が促された時間

新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて1年半以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い収束を願っています。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのでしょうか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのでしょうか。コロナもきっと何かしらプラスの面も持ち合わせていると思った私は、主に東アフリカで活動する日本人から、コロナをポジティブにとらえる方法を学ぼうとしています。

唐渡さん

第7回目は、ルワンダでタイ料理屋を経営する唐渡千紗さんです。
唐渡さんは早稲田大学法学部を卒業した後、株式会社リクルートに就職し、人材事業に従事します。しかし激務と子育てで心身ともに疲れ、誕生日祝いとリフレッシュを兼ねて、友人とルワンダへ行ったことが唐渡さんの人生を変えます。30歳の誕生日を迎えながら、ルワンダへの移住を決め、さらに友人にタイ料理屋を開いたらどうかと言われたことからタイ料理屋を開くことにします。直感を信じたこの大きな決断ですが、2015年に移住し、ゼロからタイ料理屋 ASIAN KITHEN を立上げました。現在ではASIAN KITHENの料理が大好きなお客さんがたくさんいるレストランとなっています。唐渡さんはそんな素敵なルワンダライフを本にしています。カジュアルな文体がとても読みやすく、物語のようにストーリーの中に入っていける面白い本です!(「ルワンダでタイ料理屋をひらく」

唐渡さんにとってのコロナは「様々な点で進化をもたらした」ものだそうです。

唐渡さんは2015年に開業してからコロナが始まるまで、店にほとんどいてスタッフに指示を出す日々を過ごしていたそうです。立ち上げ直後に行った、つきっきりの指導で伝えたことを、きちんとこなせるようにはなったものの、その場で臨機応変に対応することはまだ苦手なスタッフが多いです。そのため、お金の管理はもちろん、トラブルなど、唐渡さんが常に対応していました。しかし2020年の3月からルワンダでもコロナが本格的になり、店を閉めざるを得なくなったり、飲食店は「エッセンシャルワーク」、つまりコロナ禍でも営業を認めらた業種ではあったものの、門限や店内飲食禁止でデリバリーのみ、などの制限が設けられました。この制限下で唐渡さん自身が店にずっといるという状況を取りづらくなり、スタッフへの大幅な権限移譲をせざるを得なくなりました。スタッフの人数もシェフなど最低限に絞ることとなります。不安な中、コロナ禍のスタッフに任せた営業が続き、それでも店が回っていることに気づきます。これまで勝手に出来ないと思い込んで唐渡さん自身がやってしまっていたことが、任せざるを得なくなって初めてスタッフだけで出来るんだと知るきっかけになったそうです。このことから唐渡さんは、「人は簡単には変わることが出来ないが、制約があり『せざるを得ない』という状況になると変わることが出来る。進化は制約の中で生まれるんだ」と改めて感じたと話されていました。現在もお客さんのクレーム対応など、日本スタイルのカスタマーサービスを完璧にこなしているとは言えないようですが、ASIAN KITHENの特徴の一つである安定したサービス・接客を、お客さんの喜びや感謝から体感し学んで、成長を続けているそうです。話を聞いた2021年11月中旬時には唐渡さんは日本におり、店の切り盛りは完全に現地スタッフに任せている状態でした!

シェフ

アジアンキッチンのシェフ

唐渡さんはコロナのような未曽有の危機に遭遇したことで、人生って有限だってことを意識した、とも話します。「普段の日常は当たり前のものではなく、昨日の当たり前はいつか変わる」そういう意識が研ぎ澄まされるのはいいことだと言います。さらにコロナ禍、国籍で入国の可不可が決められるなど、国単位が強くなっています。このことも、グローバル化が叫ばれる中、意識が薄れていた国家という単位を再認識する機会だったと話されていました。

また、衛生面で人々の意識が向上したことも、飲食店を経営する唐渡さんにとっては良かったことだそうです。ルワンダは取り締まりが厳しく、コロナ禍ではマスクをしていないと警察に捕まってしまいます。その効果もあり、ルワンダの人はマスクを必ず着け、さらに手洗いや消毒を日常的に行う人も増えました。ASIAN KITHENでもマスクをつけていますが、唐渡さんはパンデミックが終わった後もずっとキッチンスタッフにはマスクを着用してもらうと言います。ルワンダ全体でもニューノーマルな習慣として、衛生面に気を使っていくことが求められるようになりそうです。これは感染症などが多いアフリカの国としてはいい動きだと言えます。

コロナ禍のスタッフ

スタッフと共にコロナに負けず頑張っています

そんな唐渡さんに将来のことについて伺うと、「ASIAN KITHENを『昔は日本人が切り盛りしていたらしいよ』と言われるくらいまで自分の存在感を弱めた、現地に寄せたお店にしたい」と話してくださいました。唐渡さんにとってもともとはキャリアの中心だったASIAN KITHENですが、高級志向の2店舗目の出店をコロナ禍で諦めざるを得なかったことから、気持ちの変化が生まれました。
2店舗目を考えた理由であったASIAN KITHENの課題点、『小さく、ロードサイトにあるためうるさい』はコロナによって利点を生み出します。この問題点から、ASIAN KITHENの料理が好きなお客さんの多くは、テイクアウトをしてました。ロックダウンや門限によって多くの店が潰れる中、ASIAN KITHENは小さいので家賃も比較的抑えられ、さらにテイクアウトに慣れていたため生き残ることが出来たのです。唐渡さんはデメリットととらえていたものが、実は条件が変わると長所に変わると気づき、目の前の事象に一喜一憂したり自分の力が及ばないことに手を出してもしょうがないのだから、出来ることを淡々とやろうと思うようになったそうです。これからは、もっと日本とルワンダを自由に行き来し、家族との時間も大切にしながら、新しい人生を進んでいくようです。

店内

唐渡さんからは、変化に柔軟になることで進化することができ、また短所は長所に変えることができ、それに気づくことが大切と学びました。私も短所をどうにかしようとするのではなく、それを長所に変えていけるような努力をしたいなと思いました!

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