2020年10月:スタンフォード式最高のリーダーシップ

(総論)

ビジネスの現場でこういう言葉遣いとか行動とか気を付けないといけないと思っていたことが、心理学の裏打ちをもって一般化されており、更に深く学ぶことが出来た。自分のリーダー論の教科書はしばらくコレにしようと思った。本書の内容とは脱線するが、この本によって自分の経験等の抽象化一般化、その言語化が大事と感じた。

(印象に残ったこと。多め)

・We are the leaders

自分が自分自身のリーダーにならなければならい。どこに進むべきか自分で決め、自分でその責任を取らないといけない。自分のためだけでなく、家族、コミュニティ、同僚のために最良の行動をとる責任があり、それはつまり「誰もがリーダー」ということである。

・リーダーは個人心理だけでなく集団心理と対峙しないといけない

集団は人の「数」が増えると、感情や考え方が「伝染」されやすく、考えが同一化し個性が消え結果「暗示されやすい」。そして集団心理は、真理よりもわかりやすさを求めてしまう。これが正解だと錯覚させてくれるカリスマ的な強いリーダーを求めてしまう。真理を追究するのは頭を使いエネルギー消費が大きく、コスパが悪いからだ。

・集団心理において、考えの感染力は弱いが感情の感染力は強い

人間はミラーニューロンによって、誰かの感情と同じ感情になりやすい。誰かが抱いたリーダーへの嫌悪感、不信感はあっという間に伝染してしまう。たった一人の嫌な感情に、チームは簡単につられてしまい、一人の感情がチームの総意となってしまうこともある。

・現代ではアサーティブリーダーが求められている

多くのリーダーは威張りすぎているか、頼りないと思われている。パッシブとアグレッシブの中間がアサーティブだが、事象に対して中間の態度をとるというよりは、バランスよく強く働きかける部分とそうでない場面を知っておくと理解した方が良い。意見を主張するが、客観的に他者の意見は聞き取り入れ、まわりのことを考えて意思決定する。

・アサーティブリーダーは4つの構成要素がある

authentic, servant, transformative, cross-borderの4つ。

・authentic なリーダーとは

ありのままの飾らない姿=オーセンティックな状態、が相手に向き合う前提となる。部下は、このリーダーは上下関係という役割を外した生身の人間として接してくれると感じ、信頼し、結果リーダーについていこうと考える。

・authenticになるには

①弱さを認め、②役割性格を超え、③人と比べず、④生涯の大きな目的を見つけ、⑤超集中状態になることがauthenticになる要素。①が何よりも大事だが、部下に全てのありのままの弱さだけを見せてはいけない。弱さがあっても行動し導くことがリーダーの役目であり、必ず弱さからの成長まで示さないといけない。②は常に初心者の心を持つこと。③は④があれば達成しやすい。⑤は実践できると脳の可塑性が高まり①~④を実践しやすい。脳に無駄な情報が少なければ、年齢が高まっても脳は変化出来る。

・authenticな素質を磨くためにembodyの習慣を

飾らない姿であれば、言っていることとやっていることは一致する。約束を守ることを実践すればatuhenticに近づく。時間を守ることも同じ。時間という概念は新入社員でも社長でも一緒で、初心を持っていれば自分だけルーズになれる理由はない。

・servantなリーダーとは

人に奉仕し、能力を引き出し、背中を押す人がservantである。これを実践するためには、まず部下に信用されてないと成立しない。上司は部下を査定する側だから弱さを見せることは評価を下げることにつながりかねず、背中を押す場所=弱い部分が明かされない。

・servantになれない心理とは

自分の能力とプライドが高く自分以外信用できない人は一人で突っ走り孤立する。部下にナンバーワンに地位を奪われたくない心理を持つ人も一人ですべてをコントロールしたがる。こういったリーダーの天下は長続きせず、チームの破滅とリーダーの失墜にまっすぐつながる。

・部下に弱さを見せてもらうためには

まずはリーダーが弱さを見せる。すべての事象はリーダーの責任であるため、まずは自分の非を認める。Ask, don't tell. 部下の話を必ず聞く。指示するのではなく、出来るかどう思うか質問する。

・うまく奉仕するためにzpdゾーンの仕事を渡す

部下が一人で簡単に出来る領域は支援の必要がなく、一人で困難な仕事は上司がほとんどのことをやるか部下は一人で疲労困憊するか諦めてしまい、servantな状態になれない。丁度真ん中にあたるチャレンジングなzpd(zone of proximal development)の仕事を与える必要がある。zpdを見極めるためには小さな失敗を早めに経験させ、微調整する必要がある。失敗であっても任されたことから部下は大きく学ぶ。tell me and I forgert, teach me and I may remember, involve me and I learn. やってみないと学べない。

・transformativeなリーダーとは

自分を変容させ、そのうえでチームを変容させられる力を持つリーダーのこと。自分を変容させるために、まずはマインドセットをfixed mindeset(どうせ人は変われない) からgrowth mindeset(人は変われる)に変える必要がある。

・チームを変容させるには4つのIを使う

チーム全体ではなく一人の人間として(Indivisualized), 知的な新しい刺激(Intellectual)を与え、明確なビジョンでやりがいを与え(Inspirational), 自分という理想のロールモデルを示して見せる(Idealized)。チームメンバーが、外敵刺激によってやらされている状態よりも、自身で変容して自らやっている状況ではパフォーマンスが大きく違う。

・ストーリーテリングはチームにつながりを与える

人類は古代よりストーリーに刺激されるように出来ており、化学的にも脳内物質が分泌され共感の感情を生む。箇条書きのように話すのではなく、一貫したストーリーを持って話すとチームにつながりが生まれる。さらに、自己の話、自分たちの話、今どうすべきかの話、というステップで話を進めると効果が高まる。自己の話はすぐに話せるものではないが、多くの場面で使えるので常に準備しておくとよい。

・適切なフィードバックが変容に必要

変容は一朝一夕で出来るものではないので、部下が順調に進んでいるかフィードバックをしないといけない。良い点に着目してフィードバックすると部下のやる気は高まる。ネガティブなフィードバックがたとえ正しい内容であっても部下が心の底から納得していなければ効果が出ないため、部下に響くように以下の伝え方を使うとよい。サンドイッチ戦略:まずほめ、指摘し、最後にまたほめる。状況にフォーカス:"いつも"ではなく今日"は"どうだった、と伝える。アクショナブルなものだけにする:男だから、女だからどうだと言ったフィードバックをしても仕方ないのでしない。具体的な改善案を提示する:変容が目的なので、どう変わるかを一緒に考えたり提案する。何が何でもフラットに接する:自分にとってのベストな改善も本人にとっては違う可能性が高い。自分が正しいわけではない。また、フィードバックは直後は良くない。振り返る時間を本人にも与えないといけない。

・良いフィードバックとは

ビジネスでは結果が大事だが、フィードバックは過程も評価すると以後のパフォーマンスが向上することがわかっている。また、目標達成のためのタスクを明確にし、目標と関係性の低い部分は多めにみるリーダーの方がパフォーマンスが高い。人間くさくポジティブに話す、ということも命令を機械的に伝えるよりもパフォーマンスが向上する。結局のところ言葉よりも感情が重要であり、何を言ったかよりどう言ったかである。脳はウソを見抜く。

・cross borderなリーダーとは

人と人との間にある様々な壁を越えて互いを尊重し働ける環境を整えられるリーダーのこと。文化・慣習、行動様式、前例の壁が個人としてはよくあるもの。

・ビジネス上よくある壁

パワー、男女、世代・年齢、ステレオタイプの壁がよく存在する。パワーは上司部下の関係であるものだが上下関係なので壁がゼロであってはいけないが、適切な高さである必要がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?