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Dog shits in R=5km (1978-2021)

『木更津キャッツアイ』のぶっさんのように,私は,「西東京市」に住み続けている.彼の倍...つまり,42年間.
いや,そう言えば,保谷市にも住んだ事があった!...開始早々の嘘を,お詫び申し上げる...
そう,合併して西東京市という名前になる前,この場所は保谷市と呼ばれていたのだった...つまり住所は変われど,住居は変わらず,である.

そんな西東京市,その北西部には,J-POP史に残る,有名な駅が有る.

ホコ天から,メジャーへ駆け上った,JUN SKY WALKER(S)
彼らの1990年リリースの4thミニアルバムは『Let's Go ヒバリヒルズ』.
ヒバリ,ヒルズ....つまり,西武池袋線「ひばりヶ丘駅」の歌なのである.
当時私は小学5年生.それから31年,その前11年...ずっとこの街に住み,変化を見続けてきた.

歌詞にある,駅前の「Books J」という本屋は無くなったし,
フィッシュフライで有名な「ロングジョンシルバー」も今や日本から撤退してしまった.

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故に往時のではなく,似た写真しか載せられない事をお詫び申し上げる...

まぁ仕方ないことだ.
思い出は美しく,あの頃は懐かしい.
OLDIES BUT GOODIES...「あの頃」は,セピア色の薔薇の如く輝いている...
しかし,小規模店舗が大資本に飲まれるのも,ローカライゼーションが足りなかった海外進出店舗の撤退も,抗い難き時代の流れである.
そして,今日あなたに伝えたいことは,そんな歴史に書いてあることでは無い.

美しい思い出とは程遠く,歴史にも,データにも残ってない,
「犬の糞」の話だ.

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(※あなたの気分が悪くならないよう,画像は別のものを表示しています...本物でなく,似た写真しか載せられない事をお詫び申し上げる...)

日本では,現在「問題探し」のゲームが流行り過ぎている.
小規模な問題を「ペインポイント」と主張し,アプリで解決できますと投資を集めたり,問題発見には日々勤しむ割に,問題解決には全く興味が無い人たちが「いいね」を稼いでいる.

私は断言する.
物心ついてから30数余年,この自宅から半径5kmを定点観測した限り,現在の日本は,過去と比べ,もの凄く暮らしやすくなった.
なにしろ,西東京市では,現在,「犬の糞」を探し,写真を撮ろうとしても,全然見つからない程清潔なのである.
(...で,かりんとうを買ってきて撮影したという顛末だ)

『21世紀の啓蒙』
これは,著者スティーブン・ピンカー氏が,「世界は進歩し続けている」と言う事を,データから客観的に説明し,その世界の進歩は,「科学的な態度・試み」によって積み上げられたもので,世界の危機だと煽るような報道や,宗教の威厳を借りて伝統を過剰に擁護し,科学を批難するような言論に屈せず,理性的に生きよう...と主張する内容の書籍だ.

自分もその趣旨には大筋で納得するのだが,気になった点が一つある.
示されるグラフは,世界の識字率の向上や,幸福度調査,労働時間の変遷...と言う風に,自分の人生42年間から,「実感」出来ないような項目が並んでいる.
データに「手触り」が無く,ピンと来ないのである.

「野良犬」と言っても,今の若者にはピンと来ないだろうか.
昔は...35年前は,居た. いや,居ない. 普段は居ないのだ.
実例を上げれば...半ドンの授業を終え,意気揚々と帰宅途中の小学生の眼前に,「野良犬」は突如エンカウントする.

首に縄はない.近くに人も居ない.
小学1年生だった,当時の私は,まさに「絶望」した.
...とにかく,逃げよう!..家は反対側?...いや,そう思ってる間にジリジリ近付いてくる...ヤバい...とにかく...走れ!
が,野良犬の運動能力と小学生一年の脚力の比較検証は,残酷だ.
ほどなく,逃げ走る少年はスネに強烈なひと噛みを感じる...
悲鳴に驚いたか,少年の弱さを確認出来たからか,野良犬は意気揚々と去っていき,少年は敗者として家に帰る...
片手で数え切れる位だが,そんな事件は何度も起こり,岩崎少年はその度に,
泣いた.
それが,昭和の終わり頃の景色だ.

人情...情緒...そう,良かった面は確かにあった.
しかし,思い返すのも苦々しい事だが,
...犬が吠えれば,後ろを怯え振り返る.
...犬の糞やネバネバのガムを踏まぬように下を向いて歩く.
...路地の奥を見やればオッサンが隅で立ち小便.
昭和末期には,フツーに発展途上国の残滓があった.

我が町西東京市は,その名の通り,東京に属し,吉祥寺まで自転車30分と言う,栄誉有るダウンタウンだが,35年前はこの程度.
我が家も当時は,あの「汲み取り便所」だった.

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悪かったことを,忘れ過ぎだ.

良い思い出だけ伝えては,ダメだ.
そんな些末な事...と,記さなかったのが,ミスだ.
平成は失われた30年....と良く言われる.確かに,日経平均株価がやっとこ最高値を取り戻したこの期間で,産業,経済面に於いて,世界のトップグループから日本は脱落した.

しかし,こと,「生活面」だけに絞れば,劇的な改善があったのも事実である.

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ミレニアムから21年,車は空中チューブの中を飛んでないが,腐臭を放つ地上の下水道のようだった『石神井川』は,鷺がノンビリ佇むほどに浄化された.

中学生の時に習った瀬戸内海の赤潮....は,最早過去のものらしい.
植物に必要な栄養素...その重要な供給源は動物の排泄物だったりするのだが,川が綺麗になった結果,海が貧栄養価する...と言う贅沢な悩みがニュースになっている.

同じ「生活」の話でも,緩慢にしか変わらない事も,多い.
ジェンダーや,女性の平等などの,進歩は,欧州の国々と比べれば,明らかに遅い.
(進んではいる...が)

しかし,経済,産業,政治...問題が山積みの分野から少し目を離し,自分の半径5kmの「生活環境」を振り返れば,気付かされる事は多い.
10年程前に西東京市に出来た,歩行者と自転車が別レーンの,ランニングに適した道路.私がそこを走っていると,ワンちゃんのお散歩と良くすれ違う.

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今や,犬のうんちは飼い主により,持ち帰られているばかりか,おしっこすら洗い流され,道の清潔と安全が保たれている.高いマナーの賜物だ.

もちろん,生活者優先主義の全てが「善」ではない.
昔,私は通信工事の仕事をしていたが,工事には,どうしてもネットの断線や,通行止めなどが伴う.効率を優先させれば,半日で終わる工事でも,生活者を優先し,昼間にネットや車を止めないよう深夜のみ作業して,結果10日間かかる...なんて経験が沢山有る.
自分たちも,この街の為に働いているのに,なぜ生活者の権利を,効率を過剰に犠牲にしてまで優先するのか?と,しばしば思った.
(ちなみに,その理由を私は,その場所で働く人には選挙権がなく,住民のみが選挙権を持つからだと考えている.)

しかし,自分は労働者であると同時に,生活者でもある.
だから,問題の指摘だけではなく,評価に値する事は,評価すべきなのだ.

日本は...自分の半径5kmの生活環境は,30余年で,劇的に改善した.
それに甘んじろとは言わない.
解決すべき問題は幾多積み上がっている.
しかし.改善された沢山の事を,まず認識してから,他の問題に目を向けるべきだ.問題や不満を,過剰に心に抱いてはならない.

「今の良さ」を理解しようとしない人に,
「良い未来」を作る事は出来ないからだ.

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こんな話を書いておいて,逆宣伝にしかならないかもしれないが,
我が町西東京市は,かりんとうの銘店,旭製菓が有る.

ぜひ応援して上げて頂きたい.
オススメは,写真には無いが,「わさびかりんとう」です.

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