破格のフリーツクールホラー「アクアリウムは踊らない」を後編が出るまでにやろう!
※このレビューは2019年発表の前編についてのレビューです。ただいま頒布されている完結編については別にレビューを書いていますのでよろしければそちらもお読みください。
今回紹介するのは水族館を舞台としたホラーフリーゲーム「アクアリウムは踊らない」です。二部作の前編となっています。
「ホラー嫌いが作るホラーゲーム」と銘打たれている今作ですが、正直破格のフリーゲームだと思っています!後編も開発中ですので、ぜひ後編が出るまでに、まさに今プレイしていただきたい作品なのです!「これリアルタイムでやってたよ」と自慢できるような作品になるのではないかとさえ感じています。
あらすじ
ゲーム内容
基本システムはスタンダードな2D脱出ホラーです。閉鎖空間にて脱出方法とはぐれた仲間を求めて探索や謎解きを進めていきます。途中でデストラップや怪物の襲来などに見舞われ、それを操作と謎解きで回避していき、生き残りと脱出を目指します。「青鬼」や「魔女の家」、あるいは各種の脱出ゲームなどを知っているのなら非常になじみ深く、遊びやすい形式になっているでしょう。
そのようなゲームの知識がなくても、主人公のスーズが謎解きのヒントになるようなセリフを言ってくれるので、適度に悩みながら進んでいくことができるかと思います。どうしてもわからない場合は作品ホームページにヒントページがありますので、そちらを読むというのもいいでしょう。また、難易度調整のアップデートがあるようです。
また、今作の特徴として、閉ざされた空間の中で多くの「出会い」があることがあげられます。一般的に脱出ホラーで出会うのはもともと知っている人であったり、敵対的な存在であることが多いのですが、このゲームでは善意のNPCや、より複雑な背景を持ったキャラクターが出てきて、対立したり協力したりしてストーリーが進みます。その空間で「生活」している存在さえいたりするのです。前述の「レトロ」「クリス」「キティ」だけではなく海の生き物などとも交流があります。
おすすめポイント①高い没入感が生む緊張と緩和、そして恐怖
「今作は期待できるぞ」と最初に感じたのはゲーム起動直後です。
いかにもツクールゲーのオープニング画面といった見た目なのですが、「はじめから」「続きから」がそれぞれ「入口から」「館内から」と、水族館にちなんだ表現になっているところにこだわりを感じます。
そしてここからスタートを選ぶと、ゲームの決定音のかわりに”ポチャン”と水音がなるのです。この音はメニューを開いたりするたびに幾度も鳴るのですが、この音が水の世界にいるという気分を高めてくれて、特にイヤホンで聴いているとゲームへの没入感がかなりあります。他にもなんともいえない美しさと不安感が共存したBGMや、画面の暗転中にイベントの前兆を起こすことでこれから何が起きるのか不安にさせるなど、とにかく演出のメリハリやタイミングが非常にうまいのです。
ホラーやサスペンスにおいては単純にイベントを起こすだけではなく、それらをどう演出するかが大切なのですが、このゲームはそれが抜群で、ホラーやサスペンス的な緊張と緩和を与えてくれます。その結果、たとえば下の画像はこれだけで見るとただの渡り廊下なのですがこのシーンでさえBGMと相まって「このシーンが切り替わったら何が起きるんだ…」とちょっとびびってしまいます。
私はこのゲームはツイキャスで配信しながらプレイしましたが、あとでアーカイブを確認したところ結構な時間で声が少し震えていることに気づきました。決してめちゃくちゃに怖い映像やグロい映像があるわけではないのですが(ホラー度に対して確認してからプレイしたい人もいると思うのでどれくらいの画像があるかは記事の最後にネタバレ警告してから掲載します)、それでもあれだけの怖さを巻き起こしてくれるのは、二年間という製作期間によって凝らされた細部の工夫のたまものだと言えるでしょう。
おすすめポイント②謎を秘め、魅力的な登場人物たち
ここまではホラーゲームやサスペンスとしてのクオリティについて書いてきましたが、このゲームはさらにキャラクターのデザインとストーリーがしっかり描かれていることが大きな特徴となっています。シンプルにキャラクターはかわいらしいですし、それだけでも魅力ですが、それだけではないのです。
たとえば主人公であるスーズは水に対して何らかの恐れがあって、それがもしかすると今回の事象と関わっているのかもしれないということが前半の段階でにおわされています。
また、他のNPCもそれぞれにバックストーリーと、この水族館からの脱出だけではない目的があり、そこからドラマが生まれていきます。
どのようなやりとりがあるのはネタバレになるので書かないようにしますが、とにかくプレイしていて続きが気になります。ゲーム攻略に直接関係ない探索場所には世界観やキャラクターにかかわる内容が多く書かれていますので、今作を味わうためにはぜひそこも探索してください。このゲームの見え方がかなり変わるでしょう。
また、そのような重層的な描き方をされたキャラクターが危機に晒されると、そのキャラクターの背負っていた思い自体が成し遂げられず消え去ってしまうということが想起され、それがより緊迫感と恐怖を高めてくれます。
逆に非常に恐怖や緊張が高まりそうな画面でキャラクターの軽妙だったりちょっととぼけたやり取りが入ることがあって、それが適度な緩和を生み出してくれます。これはへたにとぼけすぎるとホラーゲームを崩しかねない演出ですが、キャラクターの描写とゲーム全体のがしっかりできているので非常にうまくいっていると思いました。twitterで #アクおどアート のハッシュタグでファンアートが盛り上がっていたり、スピンオフ漫画のプロジェクトが始まっているのもキャラクターの魅力がなせる業でしょう。
おすすめポイント③後編が出る!
このゲームは前編にあたるんですれど、ものすごく気になるところで終わるんです!絶妙としか言えないところで終わるんです!!そして今後半が開発中なんですね!このゲームは後編の発表を機にもっと盛り上がるのではと思っているので、その盛り上がりにぜひ参加するには今のうちにやりましょう!
こんな人にお薦め!
あとがき
今回この記事を書くためにやり直してみたのですがやはり面白いし、今でも怖い!!本当に精緻にできているゲームですし、私も後半を楽しみに待っている作品です。作者様は水族館とのコラボを目指されているということですが、なんかそれできちゃうんじゃないかって思わせるパワーがある作品です!できればリリース日にがっつりやりたいと思っています!皆様もぜひ!
追記
2024年2月15日についに完結編がリリースされました!
早速当日から実況をしました。全てのエンドを見届け次第、後編も含めた総合レビュー記事を書きますのでよければnoteやyoutubeをフォロー・登録してお待ちいただければ嬉しいです。ただ、待ってよかったです。
・おまけーホラー度を確認したい人向け-
(この先ネタバレあります)
本当は一枚絵でもっと恐怖なシーン(遺体のシーン)があるのですが、それはさすがにネタバレ度が高すぎるので…!
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