【独白】無責任な幸せ者

 努力ができる、というのは才能だ。
才能の無いものがする努力など、何も特別なものではない。持たざる者は、持たざる者のままで何も変われない。

 持たざる者はこの世界のマジョリティで、俺もお前も、その1人に過ぎない。何も理解することができない、凡人中の凡人。俺たちには何もできやしないだろう?

 朝は一日の始まりを呪いながら起床し、昼は仕事か、学業か、どうせ何も考えずに無為な時間を過ごし、夜は明日を疎みながら眠る。そうして毎日を消費するだけだ。それを繰り返し、繰り返し。空の青さや鳥のさえずり、木々の温もりや雲間の光、月の輝きを無視して、生きていることを無視して生きていく。

 俺たちは持たざる者だから。

 持つ者は違う。
朝は希望と共に目覚め、夜は明日を夢見て眠る。毎日を懸命に過ごす。生きることを努力する。その汗と、涙と、血は俺たちに流せない。だから彼らの努力は輝く。彼らの努力は特別だ。これまでのうのうと生きてきた俺たちには決してわかることのできない、努力がある。

 俺たちは、持たざる者だ。
そして努力しなくても生きていける、無責任な幸せ者だ。だからせめて、寄り添える心を持つ。

(了)


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