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=渡部ひの 短歌や俳句をよんだりよんだりしています。 https://kugatu.n…

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=渡部ひの 短歌や俳句をよんだりよんだりしています。 https://kugatu.net

最近の記事

ねうねう vol.4 感想

収益が全額保護猫活動に役立てられる猫づくしの俳句アンソロジー誌「ねうねう」の vol.4 に参加しました。 悲しくもねうねうはこの号でしばらくお休みとなってしまうのですが、今号でも読むほどに猫、猫、猫を味わえる楽しさは変わりません。 恋猫の眼に火柱の立ち上がる / 金子敦 恋猫のあの声も火柱の音だったのか!と思うほど、あざやかに景を結んでいる一句だと思いました。 定年とふ些事よ仔猫の寄り添へる / 石田経治 仔猫の前には定年さえ些事になってしまう…寄り添った人と仔猫

    • ちゅいんぐゎ vol.6 感想

      一人っ子の方三人(住田別雨さん、松本てふこさん、ミヤコンドリアさん)が作っていらっしゃるちゅいんぐゎというネプリ(今回は note で公開されています)を読みました。 お題は、仮想遠征ということのよう。 詩「処女地区」(住田さん)は言葉で街を作っているような詩だと思いました。色や風景が模様になり模様がリズムになり、また濃淡に戻り、何かの興亡を見ているようです。五色のリボンの糸電話が好きです。宝塚の五色の虹からきているんでしょうか。 俳句連作「遠征に行きたい」(松本さん)は

      • 食べものが空から降ってくるとき

        食べものが空から降ってくる詩が好きだ。 蟹の月夜コーンフレーク降ってくる/中西ひろ美 月の夜、蟹は月のひかりを恐れて食べものをとれず、痩せてゆくという。その蟹に、月はみずから欠けていくようにして金色のコーンフレークを降らせる。 骨盤のゆがみをなおすおかゆです、鮭フレークが降る交差点/笹井宏之 癒えようとしておかゆを黙々と口にはこぶとき、心は別の場所を夢みている。あと少しの鮭フレーク。ひとふりの塩っ気の降る場所。体と望みの交差する場所。 生きていきたい、というたましい

        • 聖所

          列車はわたしの聖所だった。 郊外から一都二県をまたいで通学していたから、列車に乗っている時間は一日の二割近くを占めていた。列車、と書くのは、電化されていない路線も含んでいたからだ。 列車に乗り込むと、みんないっときの眠りにつく。列車は静々と、勤勉に、それを運んでゆく。その静けさが好きだった。 見も知らぬ女の人が、本を読んでいる。フローチャートが書かれているのが遠目に見えた。その人の姿に自分の将来の姿を重ねた。 30分に一本の列車を乗り逃した待合室で、一冊の本を繰り返し

        ねうねう vol.4 感想

          ねうねう vol.3 感想

          収益が全額保護猫活動に役立てられる猫づくしの俳句アンソロジー誌「ねうねう」の vol.3 に参加しました。 vol.1、vol.2 に続き、vol.3 でも尽きることのない猫句の数々に、俳人の目と猫の魅力の奥深さを思いました。 自爆する直前仔猫撫でていし / 堀田季何 仔猫の感触とそのあとの瞬間が俳句の短さとともにそのまま胸に突き刺さって来るようでした。 恋猫のこゑ短調に変はりけり / 金子敦 春先の猫の声が短調になる瞬間、たしかにある気がします。フラットがたくさん

          ねうねう vol.3 感想

          とらぬた vol.15 「粉」 感想

          いつもわくわく出しにゆくチコとトレースさんのネプリ「とらぬたぬきうどんでおなかを膨らます唯一の方法 vol.15」 #とらぬた を読みました。 寝る前にメガネをはずす 夜の夢にひるまの夢は連れてゆけない(しま・しましま @simashima9)「そして公爵はゆううつそうに粉を振って部屋を出てゆく」 なんとなく、ふつうの人とは違う時間軸…たとえば寿命がとても長いとか、もう死んでしまっているとか…で暮らしている人がこの世界のどこかでつぶやいてるような短歌だなあ、と思った連作で

          とらぬた vol.15 「粉」 感想

          ちゅいんぐゎ vol.2 感想

          一人っ子の方三人(住田別雨さん、松本てふこさん、ミヤコンドリアさん)が作っていらっしゃるちゅいんぐゎというネプリを読みました。 お題は「百合」。詩「糸偏に告る(住田さん)」は互いが互いを見ている…というよりは隣りあって同じ方を向いて、時間を共有しているような印象があり、そこから感じられるものが好きでした。 俳句連作「I don't like Mondays.(松本さん)」はこちらを閉じ込めてくるような雪に、主体が体を使って色々なアプローチをしているせいなのか、自分の体も動

          ちゅいんぐゎ vol.2 感想

          とらぬた vol.9 「火」 感想

          毎号楽しみにしているチコとトレースさんのネプリ「とらぬたぬきうどんでおなかを膨らます唯一の方法 vol.9」 #とらぬた を読みました。 冬ごもりなんかしないと雪のなか駆けだしてゆく弟と熊(雀來豆 @jacksbeans2) 火を怖がらない熊と熊を怖がらない弟。二人(?)の駆け出してゆく勢いが、冬を散らしていきます。人の心には原初から火への恐れのようなものがある気がしますが、この世界ではそれすらも手をとりあって飛び越えてゆけそうな感じがしました。 旧式のガス給湯器の中に

          とらぬた vol.9 「火」 感想