映画・アニメ好きへ贈る!バンドアニメの到達点「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」を語る⑤星が導く物語
ここまで続けてきた感想文も今回で最終回になります。
最後はバンドリと星にもまつわるお話です!
キラキラドロドロしよ☆
キャッチコピー
これは公式にて使用されていた物語前半と後半のキャッチコピーです。後半になるにつれて拗れていく様子を表したこのドロドロというフレーズには、多くの人が共感していたように見受けられたのですが、ぼくはこの物語にはドロドロとしたものを感じていませんでした。
みんな心に傷を抱えて、自分勝手に行動して、拗れて、また傷つけ合って……と、要素だけ見ると確かにその通りにな気もします。特に、2話でそよが燈返球botと化したシーンや暗闇の中通知を弾くシーンにはゾクゾクしましたし、8話で祥子に袖にされるシーンは、BGMやキャストさんの演技も相まって昼ドラ的愛憎劇な様相を呈していました(どれもそよ絡み……)。
それでも。
決して爽やかとは言えない関係だとしても。嫉妬にまみれて罵り合うでも、誰かを陥れる屈折した欲望に溺れるでもなく、そこにはただ居場所を求めてやまない彼女たちがいました。ぼくはそんな不器用で迷子な彼女たちに青春の輝きを感じていたのです(サイコな視点で観ているだけの可能性は否定しきれない……)。
「それでも。」
最後の逆接に込められた願い。それこそがこの物語の最も大切な部分なのでしょう。
ざらざら、じめじめ、ずきずき。泥だらけで傷だらけの関係は、さらさらしてはいないかもしれません。それでも、ドロドロと呼ぶには美しい物語。仮にドロドロだとしても、ドロドロという名のキラキラです!(?)
というわけで、間を取ってドキドキと呼ぶことにしませんか!?
返歌
順番を前後させてみました。
こう並べると、前半のキャッチコピーが後半への返歌のようにも見えてきます。不安な問いかけから一転、傷を受け止めて進もうとしているようです。
これは単なる偶然かもしれませんが、ぼくはこのコピーの中にも一つの物語を感じたのでした。
やっぱりキラキラ!
他にも、この物語がキラキラだと感じた理由の一つに、この世界のおおらかさがあります。
燈は学校では「羽丘の不思議ちゃん」と認識されていますが、そんな彼女に向けられる眼差しはとても温かく、決して奇異の視線などではありません。そこに登場人物たち全員への愛と救いを感じるのです。
燈がクラスメイトと話している姿を見ているだけで嬉しくなり、燈に優しいクラスメイトのことまで好きになってしまう。そんなキラキラした世界が大好きなのです。頼む……みんな幸せになってくれ……!
本作にはキャッチコピーだけでなく、見返すと別の意味に見えるセリフや歌詞もあり、何度観ても飽きませんでした。それはつまり、観た人それぞれにも共鳴する瞬間があるということだと思います。
見る角度によってキラキラといろんな輝きを返せるのは、それだけいくつもの愛が散りばめられている証なのかもしれませんね。
星が導く物語
ボーカルは星
過去のバンドリ作品「BanGDream! 3rd Season」では「ボーカルは星」というテーマが語られましたが、それはこの「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」においても受け継がれていました。
燈と出会った夜に初華が見つけた北極星という星は不動の星で、地球から見た天体運動の中心にあたります。
みんながバラバラになり、暗い海に放り出されても、ただ一人バンドもそよも諦めなかった燈。薄明りの中言葉を紡ぎ、スポットライトを一身に浴びる不動の姿は、紛れもなくバンドの星であるボーカルに、そしてこの物語の主人公に相応しい輝きでした。
そんな"星"の輝きに惹かれて一人また一人と再び仲間が集ってゆく展開には、バンドリの魂を感じた人も多かったのではないでしょうか。
星を繋いで
誰もが持っている半径1メートルの宇宙。そこには、たとえ手の届く距離でさえ、荒涼な深淵が広がっているものです。
それでも。結んだ線がバラバラな星たちに星座という居場所を与えるように、バンドという居場所が彼女たちを結び、いつしか運命を共にする仲間となってゆく。そうして絆を育む姿には、いつだって胸を打つのです。
本作は既存のシリーズと毛色こそ違いますが、そこには確かにバンドリの魂が宿っていました。バンドリの魂を宿しつつもバンドリの枠を超えて、バンドリの世界を広げる「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」は、バンドリの新しい星として、これからも新しい夢を見せてくれることでしょう。
星に願いを
これは本編と直接の関わりはないのですが、MyGO!!!!!のバンドモチーフは羅針盤を模したものとなっており、「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」公式サイトやガルパ及びガルパのMyGO!!!!!特設ページでもそのモチーフが見られます。このモチーフが回転するアニメーションは、くるくると迷う羅針盤にも、キラキラと瞬く星にも見えます。
そして、羅針盤は、先の見えない航海において、船員たちを星明かりと共に導くもう一つの"星"。
「MyGO!!!!!という居場所が、彼女たちを導く羅針盤となりますように」
このデザインには、そんなロマンティックな願いが込められているのかもしれません。
おわりに
最後にしてようやくMyGO!!!!!が結成し、5人の迷子たちに救いが訪れました。きっと初めてMyGO!!!!!としてライブを終えた5人を迎えた拍手は、あの日の雨音をかき消すものだったのでしょう。
そして同じくクライマックスに颯爽と現れ、深い爪痕を残していったAve Mujicaと祥子。二つのバンドが出会う時、何が起こるのでしょうか。そして燈たちは祥子を救うことができるのでしょうか。
今はただ、物語の続きが楽しみで仕方ありません。
全5回に渡って続けてきた感想文もそろそろ最後です。
最後は未来への希望に溢れた燈の大好きな言葉で結びたいと思います。
MyGO!!!!!がみんなの羅針盤に、そしてこの言葉がみんなの北極星となって、彼女たちの未来を照らしてくれますように——
「もう、何があっても離さない。一生、離さないから」