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平成ガメラとMTG(マジック:ザ・ギャザリング)の奇妙な関係を考える。

※2018年初稿
※2020年一部、加筆修正版
※2021年11月最終加筆版

序文(飛ばしても可)

先日、ちょっぴりいかれたオールナイト興行に定評のある池袋新文芸坐で、昭和ガメラオールナイト4本立てを見てきた。
1965年の第1作目『大怪獣ガメラ』から『対バルゴン』『対ギャオス』『対バイラス(90分版)』というラインナップで、いまさっき『バルゴン』『ギャオス』で見たばかりの特撮シーンが『バイラス』で20分間まるまるバンク(使い回し)されるのは忘れられない時間だった。

しかし、上映は思った以上の来場者が集まり満員で、「昭和ガメラを4本続けて見てぇぜ!」という欲望を仕込み刀のように隠し持ちながら社会生活を送っている人の多さに驚かされた。
(ちょうどこの加筆のタイミングでは、「特撮のDNA展 平成ガメラの衝撃と奇想の大映特撮」が開催され、バンダイのムービーモンスターシリーズでも平成ガメラが発売される)

来ているのかもしれない。
もしかしたら、ガメラブームが。
そんなガメラフィーバーに合わせて、ちょっと昔からガメラについて書きたいことがあったので書いおこうと思う。
そもそもどこかにコラムとして寄稿したいなーと思っていたのだが、冷静になると、こんなこと掲載させてくれるところ多分ない。
じゃあ良いよ!勝手にやるよ!

アナログ特撮の金字塔・平成ガメラに隠された魔法

ガメラといえば、自分の世代的には平成ガメラ三部作だ。
95~99年に公開されたこのシリーズは、アナログ技術を使った特撮怪獣映画の一つの到達点といえる。
その魅力の三大要素をあげるなら、樋口真嗣特技監督による超クオリティのアナログ特撮、金子修介監督による重厚かつツボを押さえた演出、そして伊藤和典氏によるSFマインド+古代ロマンにあふれた脚本だ。
特に伊藤氏による脚本は、「古代アトランティス大陸にいたらしい、なんかデカイ亀」という昭和ガメラのぼんやりした出自を、「実は超古代文明によって作られた生物兵器だった!」というかっこよすぎる設定にしたことで作品の方向性を決定付けた(ちなみに平成ガメラの世界にはフツーの亀は存在しないという裏設定がある)。
そんな伊藤氏だが、ガメラの制作当時「とあるもの」にハマっていて、その片鱗が平成ガメラの隅々に現れている、というのが一部のファンの間で知られている。
さて、ここでやっと本題だが、…皆さんは『MTG(マジック:ザ・ギャザリング)』を知っているだろうか。

「ガメラも知らないのに、そのうえまたMTGの話題かよ、知らないの二乗だよ!」という声も一部から聞こえてきそうですが、
良いよ!勝手にやるよ!
平成ガメラの中には、世界最古のトレーディングカードゲームであるMTGネタが散見されるのだ。
伊藤氏のインタビュー記事が載ったMTG専門誌も発見できたので、MTGと平成ガメラの間にあるミッシングリンクをここに記しておきます。

ネヴィニラルの円盤

平成ガメラ3部作の中で、MTGの影響が色濃く感じられるのは、第三作目『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』である。
伊藤氏がMTGに本格的にハマったのは、はじめて日本語版が発売された「第4版」の頃からだとMTG専門誌のインタビューで答えている。
この第4版(日本語版)が発売されたのは96年の春なので、99年に公開された『ガメラ3』の制作時にはMTGにハマっていたとすると時系列的に一致する。
逆に、95年と96年に公開された1作目、2作目に関してはMTGの影響がほとんど無い、ということも言えるだろう。
つまり、ここで言うガメラは『ガメラ3』のみということになる。
いくつかある平成ガメラとMTGのリンクの中でもっとも具体的なのは、「Nevinyrral’s Disk」だ。

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※NevinyrralのDisk
『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』より

『ガメラ3 邪神覚醒』の劇中には、とあるCD-ROMのシミュレーションゲームが登場する。
PC画面上に表示されるこのソフトの名前が「Nevinyrral」で、これはMTGのカード名「ネビニラルの円盤」から取られている。

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このカードの効果は「すべてのクリーチャーとアーティファクトとエンチャントを破壊する」、要するに大体全部をぶっ壊す豪快なカードなのだが、これを環境破壊シミュレーションソフトの名前に使っているのだ。

さらに、この「Nevinyrral」は、そもそも「Larry Niven(ラリー・ニーヴン)」という人物名のアナグラムになっている(信頼と実績のMTGwikiより)。
ラリー・ニーヴンはSFファンタジー作家で、『魔法の国が消えていく』などで魔法の力を有限のものとしてロジカルに表現した「マナ」の概念を作り、MTGの「数値化されたマナを土地から引き出して魔法を唱える」というシステムに大きな影響を与えた。
平成ガメラの世界にも「マナ」の概念は登場し、第二作目でガメラが地球上のエネルギー=マナを集めて強敵・レギオンを撃退したため(いわゆる元気玉)、枯渇したマナの影響で『ガメラ3』に登場するイリスやハイパーギャオスが覚醒してしまったという流れがある。
伊藤氏は、「Nevinyrral’s Disk」と名付けることで、MTG、さらにその元ネタであるラリー・ニーヴンの『魔法の国が消えていく』に敬意を捧げたのだと語っている。

またたくスピリット、そして

MTG専門誌でのインタビューでもうひとつ興味深いのは、怪獣のデザインにもMTGの影響が伺えることだ。
伊藤氏は、『ガメラ3』に登場する異形の怪獣・イリスのデザインソースとして「”またたくスピリット”みたいのがいい」と樋口監督に伝えたという。
「アイスエイジ」に登場する「またたくスピリット」がこれだ。

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記録によると樋口監督は「きれいすぎる」と返したようだが、翼の感じや、光る単眼はイリスのイメージに生きているように思う。
特にイリスの飛行時の翼には、またたくスピリットの遺伝子がかなり感じられる。

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※イリス飛行形態
『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』より

さらに、これは関係者の証言はないのだが、個人的にどうしてもイリスのイメージソースの一つではないかと思っているカードがあるので、それも載せとこう。
※比較用にイリスも

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※ガメラ3に登場するイリス

これは、「メタリック・スリヴァー」というカードで、色と言い、頭部の刃物のようなデザインと言い、爪のついた触手と言い、イリスへのミッシングリンクを感じさせはしないだろうか。うん、するよね。
このカードがMTGの「テンペスト」で登場したのが97年の10月、『ガメラ3』の公開が99年の3月。
平成ガメラは概ね1〜2年の製作期間があったというので、時期的にもドンピシャなんじゃないかと思っているのだが。。真相は果たして。

というわけで、今日は平成ガメラとMTGのちょっとした関係を紹介してみた。
平成ガメラが死ぬほど好きで、しかもMTGが死ぬほど好きな人はそんなにたくさんはいないだろう、なら俺がやらねば誰がやる!という使命感もあり。
つまり僕が言いたのは、MTGをやってる人はみんなガメラを見るべきだし、ガメラを見ている人はみんなMTGをやるべきということだ。
答えはシンプルだ!

※2021年11月22日加筆

昨日(11/21)、幸運にも熱海怪獣映画祭で伊藤和典さんとご一緒し、この「平成ガメラとMTGの関係」について直接お聞きする機会があった。
実は、伊藤さんにMTGの話をするのは2回目なのだが、前回は「またたくスピリット」のカードにサインをもらうのに必死で、もらったらもらったで満足してしまい深掘りしたお話はできなかった。
しかし!今回はお聞きしたいことをお聞きできた!

そして、長年の疑問「イリスのイメージソースになったのは、またたくスピリットだけでなくメタリックスリヴァーも含まれているのでは?」をついに解決したので、追記しておく。

伊藤さんに、メタリックスリヴァーを見ていただき、このカードのイラストがイリスに少しでも影響を与えていないか聞いたところ、

「たしかに似ているね。でも、このカードは知らない。イリスの参考にあげたのは"またたくスピリット"だけ」

メタリックスリヴァー、他人の空似!!!!!!!!

伊藤さん、突然のご質問、失礼いたしました!!!!
僕は、本当に満足です。

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