07:ノビルを掘らずに抜いてみる
その辺で収穫できて食べられるものとして、初めて知ったのはおそらくノビル(野蒜)だったと思う。
確か母と川原かどこかに行き、これが食べられるんだよと教わったような気がする。幼稚園児の頃だろうか。ありふれた話なので、捏造された記憶かもしれない。
ノビルは野蒜と書くだけあって、葉っぱ部分にニラのような香りを持っている。そして土に隠れた球根部分はラッキョウのようで、冬の終わりから春の初めにかけてなら全部が食べられる嬉しい野草だ。春を過ぎるとだんだん固くなってくる。
どこにでも生えている野草だが、どこにでも太いノビルがあるとは限らない。極太ノビルの採りやすい場所をいくつ知っているか、これは人生の豊かさに直結する。もちろんその人の人生次第だが。
だいぶ前に「美味しんぼ」というグルメ漫画で、怪我をした人のお見舞いとしてノビルを持っていくために山奥まで掘りに主人公が行ってきたというエピソードがあるけれど、もっと近くにあるだろうと思った人も多いはず。
ノビルを掘るときのコツは、とにかく歩き回って茎の太いノビルを見つけだし、丈夫なシャベルをできるだけ深く刺しこみ、土ごと掘り起こすことだ。
土の質にもよるが、ヤワなシャベルだと曲がってしまう。
ただ個人的に好きなのは、あえてそこそこ硬い土に埋まったノビルの茎を掴み、ゆっくりと引っ張るという勝負である。
だいたいにおいて茎が千切れて負けで終わるのだが、たまにスポっと抜けると大変に気持ちが良い。
この勝敗になんらかの願いを込めるのもいいだろう。だいたい千切れて負けるけど。
野蒜の収穫は簡単だが持って帰ってからの処理が意外と大変なので、ほどほどにするのが大切。そのためにも引っこ抜くというのはおススメだ。千切れても大丈夫、埋まった球根からまた芽が伸びてくるはず。
好きな食べ方はノビルごはん。生のノビル(サッと茹でても)を適当に刻み、白米に乗せて鰹節を掛けて醤油をちょろり。
どう食べてもおいしい野草だが、身近過ぎて最近はあまり食べていないような気もする。
最後に一つ。ちょっと遠いけど太いノビルがあるところをこっそり教えよう。粟島(新潟の離島)だ。
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