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湯煙によみがえる高校時代の友~~早稲田・鶴巻湯

ある日,仕事帰りに直行したのは,鶴巻湯
早稲田鶴巻町,最寄駅は東京メトロ東西線「早稲田駅」。
早稲田大学大隈講堂方面にある。出口がやたらあるので,キョロキョロ。
広めの路地(変な表現だ)を行くと見えてきました。

これは昔の画像。今は暖簾が変わっています。

「ビル乗っけサバイバルタイプ」の建物。

夕方5時。
おっと浴室はいっぱいだ。
正方形に近い浴室にカランの数は18と小ぶり。

湯舟はジェットバスが2基。
それと泡が元気なジャグジー。こちらは4人用。
湯温はどちらも42~43℃の中温。
天井,壁,床,すべてが白いタイル。
湯舟の背だけ青タイルが混じる。

ペンキ絵もタイル絵もないシンプルさが潔い。
「地方都市にあるビジネスホテルの大浴場」的感じかな・・・

ホケ~ッとしている内に,湯煙に懐かしい顔が浮かんできた
ここは,高校時代の友人Tくんの家の近くだ。
彼とは,高校の入学式で知り合った。
偶々出席番号が前後だったせいで,言葉を交わし,
以来3年間,よくまぁ一緒にいた。
鶴巻町にある彼の自宅によく遊びに行ったし,泊まり込む時もたびたび。

そして・・・大学受験
ボクは現役合格に滑り込み,Tくんを含む四人組の2人の友人も合格。
Tくんだけが浪人生となった。

大学入学後も電話でのやりとりは続いた。
当時は自宅の固定電話だけが通信手段。
そんなある時,Tくんがふと口にした。
「いいよなぁ〇〇(ボクの名字)は合格してさぁ」。
言葉に詰まった。
それだけは聞きたくなかった言葉だったと,気がついた。
Tくんも,それだけは言いたくなかった言葉なのかも。

それがオモテに出てしまったとき,ボクたちの間に壁ができた。
電話のやりとりはその日を境に終わった。

半年がたち,Tくんから電話。
第一志望ではないが,合格したとの報せ。
「おぉよかった。おめでとう」。
でも,それでお終いだった。

あれからもう45年が過ぎようとしている。
Tくんまだこの街に住んでいるのかな。
ひょっとして,今,この風呂にいたりして・・・。
湯煙の向こうに彼の笑顔が浮かぶ・・・

そんな回想が湧き出たのは,学生街にある銭湯だから,なのか・・・。
ボ~ッと見渡しているうちに,あることに気がついた。
あるモノが見当たらない。これまで入湯した銭湯には必ずあったあるモノ。

時計
浴室にも,浴室から見える範囲の脱衣所にも時計がない。

時の流れから身を解き放たれて湯舟に浸かる。
湯煙に思い出を見つける銭湯---それが鶴巻湯。

な~んて,まぁ,大げさですね。

鶴巻湯さん,ありがとうございます。いいお湯でした。

出たときにはとっぷり日が暮れていました。

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