記憶冷凍、毎週ショートショートnote、410文字
六十歳になった私は、記憶センターに向かった。
若い頃、銀行強盗をした。そして、盗んだ金を埋めた記憶を、記臆記録素子とやらにコピーして冷凍保管してある。
冷凍することで鮮度が保たれるらしい。
盗んだ金をすぐに使えばバレてしまう。この歳になるまで使わないように埋めたのだ。
記憶を解凍してもらい、脳に再びコピーしてもらった。鮮明な記憶が蘇り、埋めたことを、昨日のことのように思い出す。
家に帰ったところで、別の記憶として、俺の金を掘り返したことを思い出す。
いや、俺は掘り返していない。
埋めたことを忘れたかのように、お金を見つけて喜んでいるのも不自然だ。
センターからメッセージが届いた。
「新人が、凍った記憶素子を力ずくで剥がしたようで、隣の人の記憶が、あなたの記憶にくっついたようです。余分な記憶は、忘れてください」
思い出した。
掘り出した人間が、新たに埋めた場所を。
行ってみると動物園が建っていた。金はちょうど、ライオンがいるところだ。