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祈願上手、毎週ショートショートnote、413文字

神社での祈願には作法がある。
服装を正して、神社に赴くと、敷地に入ったところからそれは始まる。

鳥居のくぐり方、参道の歩き方、手水の仕方、拝礼の仕方など、一挙手一投足に気を配らなければならない。

子どもの頃、「祈願上手だね」と褒められると、とても嬉しかった。

しかし、成長するにつれて、自分よりもはるかに技術に優れた同級生がいることに気づいた。

茜ちゃんだ。

お辞儀の角度、拍手の時の両手の開き幅、拍手をする手の場所には、努力や経験、いや、それ以上に天賦の才を感じさせる。

その時、「上手」とは相対的なものなのだと初めて理解した。相対的な評価は時に厳しく、自分の価値を見失いがちになったり、攻撃的になったりしてしまう。

嫉妬した私は、願ってはいけないことを願ってしまった。

次の日、学校に茜ちゃんは来なかった。
私は、隣の席の子に聞いた。

「茜ちゃん、風邪でもひいたのかな?」
友達は、首を傾げた。
「茜ちゃんって、誰?」

私はやっぱり、祈願上手だった。

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追記
霜月透子さんの祈願成就発売記念ショートショートとしてホラーで書かせていただきました。

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