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猫とコンクリート

こんにちは。ノリタケです。

住宅を扱う仕事に従事する一級建築士です。

今日は猫とコンクートについての関係について書いていきます。


・なぜ猫はコンクリートに足跡をつけるのか

 みなさん。街を歩いていてコンクリートに猫の足跡が付いているのを見たことないでしょうか。

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 上の写真のようなものです。ふと見かけるとほっこりしますが、建築施工業者にとっては避けたいものです。施主様がよっぽどの猫好きでない限りは。。

 野良猫がいたずらで足跡をつけていくのか。そもそもその場所が普段の通り道だったのか。友人のねずみを追いかけていたのか。様々な憶測ができますが、その理由は化学反応にあるという説もあるので紹介するとともに、みなさまが注文者になった際のアドバイスをお伝えします。

 コンクリートは打設後、水和反応という化学反応によって硬化していくのですが、この反応はほんのり発熱する性質を持っています。

 猫が、そのほんのり発熱を求めて寒い冬の夜にコンクリートに寄ってくる。という説があります。

 個人的にはそれほど寒かったのであれば許してあげたい気持ちになりますし、愛嬌があっていいのに。と思います。

 そうはいってもみなさまが将来家を建てる際や、外構工事を行う際に猫足トラブルを回避するためのアドバイスをお伝えします。

・仕上げを刷毛仕上げにすること

 これは個人的には最強の対策ですしメリットも多いです。

 コンクリートの表面仕上げには金ゴテ仕上げと刷毛引仕上げがあります。詳しくは後日書きたいと思っている内容ですが、要は表面がつるつるかザラザラか。という違いです。ザラザラであれば万が一猫足がついた跡も上から補修をすれば目立たなくなります。

 逆に金ゴテ仕上げで猫足がついた場合に、業者が上から補修をする方法を進めるようであれば断った方がいいです。足跡の厚みプラス数ミリ上から塗るだけなので最初は目立たないですが数年したら割れてきます。業者は「数年で馴染んできます」といって逃げるので注意が必要です。

・寒い日の夕方の施工は避けること。午前中に打設すること。

 時期を選ぶことができる方は、冬場より暖かい時期を選ぶ方がいいです。猫の体重で足跡がつくほどの強度は打設後1日くらいなので、硬化がどんどん進む夏場で、かつ午前中に打ってしまえば作業員ががいる間におおよそ固まりますし、仮に猫が通っても作業員が見つければ硬化前に左官で直すことができます。

 夕方に施工完了して、すぐ作業員は帰宅。夜に足跡をつけられて養生後固まった状態で発見されることが一番最悪です。施工完了時間は非常に重要です。

・きちんと養生させること

 これは状況に応じて施工業者と相談した方がいい内容です。(事前に相談することでのちのトラブル回避に有効です)

 打設後のコンクリートはいろいろな方法で養生を行うですが、打設範囲や施工状況に応じて適切に養生することで猫も立ち寄らなくなりますし、歩いても足跡がつかなくなります。施工状況によって適切な方法が変わるのでので業者と要相談です。

 上記3点を施工者にしっかり伝えれば、猫足トラブルを撲滅できるので安心です。

・なぜ猫はコンクリートで寝ているのか

 続いての話題はなぜ猫はコンクリートで寝ているのか、というものです。

 みなさん。夏、日陰で猫がコンクリートの上で寝ている風景や冬の日向でコンクリートの上で寝ている猫をよく見かけると思います。

 コンクリートの上では猫たちは油断していて、癒されますよね。

 ここでは、猫とコンクリートの関係から鉄筋コンクリートでできた住宅についての注意点をおしらせします。

 コンクリートは「蓄熱性」という性質を持っています。ざっくり説明するとあたたまりにくく、さめにくい。というものです。

 夏の暑い日は、前日の夜の冷えを保ったままのコンクリートで涼んで昼寝、冬の寒い日は日光で温められたコンクリートで暖をとって昼寝をしています。なんとなくイメージできると思いますが、夏の日陰のコンクリートはひんやりしていて、冬の日向のコンクリートはほんのりあったかいですよね。猫はコンクリートの蓄熱性を理解しているので日々の昼寝に活かしています。

 猫が快適に昼寝ができるコンクリートでできたRC造の建物を選べば人間も快適に生活ができるのではないか、とお考えの皆さんに一つだけアドバイスです。

 コンクリートは蓄熱性は高いですが、断熱性に乏しい建材です。

 確か55cmのコンクリートと5cmの木材の断熱性能が同じだったと思います。厚み10倍です。びっくりですよね。

 猫はコンクリートの表面温度の蓄熱性を利用して快適な昼寝ライフを獲得していますが、人間が住む家はコンクリートで囲まれるので、断熱性能が低ければいくら蓄熱性があったとしても、外気の影響を受けてしまいます。 なんだか小難しい話になりますが、要は外気の影響を遮る為の断熱材が重要。ということです。

 RC造だから断熱性能が優れています。という謳い文句で宣伝しているメーカーや不動産業者がいれば、少し怪しく思った方がいいです。RC造かつ適切な断熱が快適な住環境を作ります。鉄骨造でも木造でも断熱方法によって大きく変わります。RCだから暖かい。鉄骨だから寒い。は論理的ではありません。各構造のメリットデメリットや結露問題については後日書いていこうと思います。

 皆様が賃貸住宅などで、デザイン重視で外観も内観までコンクリート打ちっ放しの住宅を選ぶ際は、夏暑くて冬寒い。下手に蓄熱性が高いので夜間に空調をしても昼の暑さのまま、寒いままの居住空間になります。RC打ちっ放しでろくに断熱されていない物件を選ぶ際はいかに見栄えがよかろうが相応の覚悟が必要なのでご注意ください。

 今回は猫とコンクリートの話からいろいろなアドバイスを書かせていただきました。皆様の参考になれば幸いです。

 

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