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日記

#2022年12月24日

2022年のクリスマス前後は、道を間違える日々が続いた。ペーパードライバーの私は、目的地に向かう行きと帰り、どちらも道を間違えた。ナビは正しい道を示しているのに、それを理解できなかったり気が急いたりして必ず一本手前の道で曲がってしまった。どんなに道を間違えても、優秀なナビが経路を再検索して正しい道に戻してくれた。が、そのことが余計に私を悲しくさせた。なんだか私の人生みたいだな。自分の判断で決めたことは上手くいかなくて、結局ナビに委ねないと生きていけない。プライベートでも良いことが無かった時期だった。
間違えて慌てながらも、頭のどこかからドリス・デイの声がして「ケセラセラ」と私に笑いかけた。映画を見たことはないけれど、どこかで一度は聞いたことのある音楽。伸びやかで、明朗な笑顔が浮かぶ曲。
深く息を吸って、ハンドルを持ち直した。本当は心のどこかで気付いている、道を間違えるという事実と、私の人生は重ね合わせられないことは。道を間違え続ける日々に少しうんざりしただけ。遠回りをしながら、目的地までの道を探そう。私の人生のナビは、私自身が指し示すものなのだから。


#2022年12月26日
今年はクリスマスケーキの代わりにシュトーレンを買った。
本来はクリスマスに向けて食べるものだが、買うのが遅かったからイブの日から食べ始めた。真ん中から2切れずつ切って、ラム酒やフルーツの香りが全体に行き渡るように断面をくっつけてから、箱にしまう。ああ、なんて手のかかるんだろう!でも、白い粉に包まれて凛と美しいシュトーレンを見ると、手のかかることがむしろ愛おしかった。
正直、数日食べてみても昨日より美味しくなっているのか分からなかった。本当に風味が変わっているんだろうか。仕方ないから、昨日の味を必死に思い出しながら食べた。できることなら、昨日のシュトーレンと今日のシュトーレンを並べて、一気に食べ比べてみたい。
そんなわがままなことを思う一方で、昨日の味には戻れないことが、私にとっては希望でもあった。その時の私は、失敗した過去の思い出に縋って、下ばかり向いて悶々としていたから。
シュトーレンは一度切り始めたら、どんどん風味が深くなって毎日違う姿を見せてくれる。
日に日に変わる味を、香りを、その都度噛み締める。クリスマスから年末は物事がどんどん収束していく、「終わっていく」雰囲気があって嫌いだった。だけど今年はシュトーレンがあって良かった。振り返るな、明日に向かえと、傍で言ってくれているようである。
私は今日も真ん中から2切れずつ切って、断面をくっつけて、箱にしまう。戻らない過去にさよなら、ありがとうを言いながら。

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