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小平霊園に座る。

通りぬけようと思ったが予想以上に広い。ベンチでフウハアと息を切らしている。汗がふきだして鼓動がどんどんはやくなる。やすらかに眠る人たちとは対照的に。そもそも「眠る」という表現は正しいのだろうか。死んだらみんなが眠るとは限らない気もする。もしも暮石が自律歩行する時代になったら。園内を自由に歩きまわるようになったら。これまでの「死=眠」のイメージは消えるかもしれない。そんなどうでもいいことを考えながらファミチキを食べる。お墓参りにやってきた車が通りすぎていく。バリバリのロックミュージックを鳴らしながら。この静かな霊園にぴったりだ。遠くから聞こえる救急車のサイレンや見知らぬ鳥の鳴き声よりも。死が生き生きと躍動しはじめる気がする。お墓は巨大な都市のようにどこまでも続く。陽が落ちれば美しい夜景が広がりそうにさえ思える。そんなどうでもいいことを考えながらファミチキを食べおえる。そしてコンビニの袋から「ファミチキバンズ」があらわれる。「別売りのファミチキをはさんで食べてね!」とのこと。それは重々承知している。だからこそファミチキを買ったのだ。それなのに先に食べてしまうとは。しかたなくそのまま食べる。はさまれているのはタルタルソースだけ。おや。これはこれで悪くない。中身がないのもそれはそれで味があるらしい。いつかこの肉体から魂がなくなるのも悪くないかもな。そんなことを思ってしまうほど穏やかな時間がここには流れている。

一 座った場所 一
小平霊園の円形広場
https://goo.gl/maps/KHVP6VK6UMXTCWMk7

一 座った日時 一
2021年03月30日(火)14:30 - 15:20

※ この文章は「00:00 Studio」でライブライティングしました。
https://0000.studio/hyakuichi

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