帰省列車
ドンドン、ドンドン。
鈍く響く線路の音、電車は北へ向かって走る。
いつもと違う進行方向の向きに座り、切符の席に座る。
男は1人で2席を陣取りここは自分の場所だと荷物を置いた。
ドンドン、ドンドン
音もなく近づいてきたあなたは私の隣に座る。
進行方向に向き2人で座る。
窓の外は静かな世界、全てを飲み込む無音の世界。
肘掛けだけが自分の場所を作ってくれている。
ドンドン、ドンドン
速度が早まる。
無限に思える時間が、次第に現実に引き戻る。
事前の連絡で電車が止まると知っていた。
バスに乗り換え、私はあなたを誘う。
2つ壁を乗り越え、また電車に乗る。
非常食と飲み物を買う、2つ。
ここから先は約束のない時間。止まらない駅に寄り道をする。
ドンドン、ドンドン
2人は何も知らないまま終点にたどり着く。
駅の構内ではたくさんの人が溢れかえり、皆その人の中に消えてゆく。
あなたは袖の下からこっそりと手を振る、私はまた電車に乗り北へ行く。
もう何も聞こえなくなった電車に乗って走り出す
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