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初めて作品を買うことと、芸術の当事者になること

人生で初めて作品を買った。海の水面に光がまぶしく映る、素敵な写真だ。

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とりあえず額縁を人生で初めて買って差し込んでみた。反射の具合でどうにも本棚やらが写り込んでしまっているのだけど、家に置くとこんな具合になるものかと思っていただけたらとおもい、そのまま掲載させてもらう(早いところ壁にうまいことひっかけたい)。


「作品を買う」と聞くと、きっとたいそうなことにおもわれるかもしれない。もちろん、僕にとって写真を買うことは、ずいぶんとたいそうなことだ。ただ、よくいう「たいそう」さは、「値段」のことであり、「価値」の話ではない。いわゆる美術的な作品にもたれているイメージはきっと、「よく価値はわからないけれど、やたら値段が高く、とにかくたいそうなもの」なのかも。


買ったきっかけは、大川直也さんの個展にいったことだった。「HUMAN SHAPED LIGHTS」という個展だった。

いくつもの写真を見て回った。自然、人、掘っ建て小屋、太陽に照らされた鮮やかなタイル。1枚1枚が横に横につらなり、会場を一周して回ってみるという、シンプルなつくりだった。そこにはわかりやすいストーリーはなかったけれど、やはり一つひとつはつながっているように感じられた。全体を見て、寄りに寄って一つを凝視して、また引いてみて。「やっぱりこの絵はこの絵の左に来るよねえ」という必然と、「とはいえ代えてみてもおもしろいかもなあ」という広がりがあった。時間にして、ほんの数十分だったけれど、人生で初めて個展の楽しみ方が少し、わかったような気がした。


で、聞くところによると「4,800円で買える写真がいくつかある」とのことだったので、直也さんに確認してみたら、本当にそうだった。個展にあるような写真をそもそも「買う」と考えたことはこれまでなかったもので、「よし、どれを買おうかしら」と、今まで感じたことのない気持ちで、改めて観て回ることにした。というわけで結局迷いに迷って決めたのが、冒頭の写真である。


値段として現れる付加価値を下げたい。

と直也さんは自身のブログで綴る。


詳しくはブログに書いてあるので割愛するが、とにかく意図あっての4,800円という価格になっている。そのおかげで、とてもじゃないけど4,800円という尺度で測れないほどに価値を感じられるものを、なんともない家になんとはなしに置くことができている。「芸術の当事者になった」というにはずいぶんおこがましい気がするけど、本当に好きなものに“当事者”として日々触れられることのうれしさを、しばらくかみしめていたい。

美術品の売買をどこか遠い場所で起こる、縁のない出来事にしておきたくない。僕の作品を欲しいと思った誰かを、芸術の当事者にしたい。



 ※WEBサイトでの販売もはじめたとのこと



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