『バルダーズ・ゲート3』ファーストクリア感想

ファーストクリア。僕がやったのはSteam版で、こっちは普通におっぱいも出るしベットシーンも一部描かれる。PS5版の規制は不明。いったんクリアしたので感想を書いておこう。ファーストクリアタイムは50時間ぐらい(後述するが普通にやったら50時間じゃクリアできないと思う)。

総評としては個人的には大満足だったけど誰がやってもおもしろいゲームではないだろう。まず基本情報からいくとテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下『D&D』)をベースにしたRPGシリーズの第3作目。一作目二作目と続いての三作目だが、物語的にはここからやっても特に問題はない(僕も前二作はやってない)。TRPGがベースになっていることもあって、戦闘にも、交渉にも、説得にも、すべての局面でダイスロールが関わってくる。ある人物を説得する時に、難易度が提示され、それを超える出目を出せれば成功、できなければ失敗というシンプルなシステムだ。

おもしろいのはTRPGらしさが色濃く残っていることで、ある選択を迫られた時にとれる行動の幅が非常にひろい。明らかに重要な人物もみんな殺せるし、逆に殺さない選択も極力探すことができる(誰も殺さないのは無理だけど)。ゲーム中は常に選択の連続で、しかもその背景となる世界観はもう何十年も育てられてきた莫大な情報量があるものなので、広大な海をひたすらに泳いでいるような気分になる。凄まじい数のネームドのキャラがいて、そうしたキャラ一人一人にD&Dと関連コンテンツからなる背景があるのだ。

戦闘はダイス要素を混ぜたシミュレーションRPGで、升目上にわかれたマップをキャラクターが移動ポイントなどを駆使して移動&攻撃、自分のターンが終わったら相手ターン、という形になっている。かなりのボリュームで通常のクリア時間は100時間から200時間ぐらいだろう。シナリオ分岐やサブクエの数が多いのはそうだけど、それ以上にシミュレーションRPGの戦闘パートは時間がかかる(味方キャラを一体一体動かさないといけないし、敵も一体一体動かすので)。で、これが正直いって大変だるい。戦闘の数自体もかなり多いし、操作性やカメラも特段優れているわけではないし、ゴミみたいな移動に関するバグ、仕様不足もあって、ここは素直に評価できない。

僕はさっき50時間ぐらいでメインシナリオをクリアしたと書いたが(サブクエはけっこう取りこぼしがあるけど、めぼしいやつはだいたいやったと思う……とかいいつつ、攻略みないでプレイしたので今攻略みてみたら仲間になるやつを仲間にしてなかったりとでかい穴がいくつかあった)、戦闘パートがあまりにかったるかったのでそこだけスピードを変えられるMODを入れてやったので、PC版でやる場合はそうした工夫も可能である。

良い点

  • 凄まじい選択肢の多さと、自由度の高さ。殺すも生かすも自分次第。

  • 凄まじい選択肢の多さの快感に繋がる、背景の豊富さ。ネームドキャラや勢力それぞれに大量の文脈・情報が詰め込まれている。

  • SF要素&ファンタジーからヴァンパイアまで、長年の歴史をかけて紡がれてきたがゆえの「なんでもあり」な世界観が楽しい。僕はD&Dはまったくプレイしたことがないが(MtGでコラボパックが出た時にやったぐらい)それでも十分おもしろいと思えた。多少混乱はあり調べは必要だったが

  • ダイスロールによる成功/失敗で展開が大きく変わってくるので普通のプレイをする以上何度やっても同じルートにはならない。ダイスロールの失敗は悔しいというよりも楽しい要素であり、これでいったい何が起こるんだろう、と最終戦に至るまでわくわくさせてくれる。すべてがプログラミング世界の中に、偶有性のおもしろさが存分に詰め込まれている。

  • 久しぶりにゴリゴリのSRPGができて楽しかった。スキルビルドも多様で。難易度もけっこう高くて最初の方は特におもしろい。

  • 多様な見た目・種族の味方たちと、同性愛でも人型以外でもラブロマンスを送ることができる。かわいい女も強い女もイケオジも優男もイケイケおじさんもなんでもござれだ。

悪い点

  • 訳はところどころ自動翻訳のまま誰もチェックしてないのかありえない状態で出てくる部分があって、決して良いとはいえない。造語や特殊な用語だらけで時に文章の7割ぐらいの単語がD&D用語だったりするので、訳がよくないのは読んでいてかなりストレスになる。

  • 移動に関してはかなりストレスが多い。特に高低差のある場所を歩いたりジャンプしたりしていると味方がついてこれなくて自動追尾が外れて消えていたり(回収するのがかなり面倒くさい)。上から落ちてくるものの下敷きになると無条件に仲間が死んだり、このへんの仲間を連れていることによるストレスがかなりきつい。

  • これまでの歴史が詰め込まれた情報の詰まった世界観が魅力だと良い点で書いたが、これは逆に悪い点にもなりえる。とにかくどいつもこいつも歴史と文脈があるキャラで大量のD&D用語で歴史や経歴が説明されるので、これまでD&Dをろくにやったことがなかったりファンタジー自体に馴染みがなかったりすると意味がわからない上に理解する気も起きない可能性がある。そして、そうなったらゲームプレイは苦痛にいなるだろう。

  • ターン制の戦闘システムはTRPGとよくあってるしおもしろいんだけど、とにかくこの100時間200時間が当たり前のボリュームの中で何十回もやらされると(しかも終盤は雑魚敵の数が非常に多いのでまたかったるい)さすがにだるい上に時間がかかる。

大きいなところでいうとこんな感じか。総評でいうと日本語版に関しては70~80点ぐらいだと思う。正直よくこんなゲームができたな、というレベルの凄まじい作品なのは間違いない。RPGでいうなら今年の話題作『Starfield』よりもよほどこっちの方が狙いが明確でまとまっていておもしろい。ただ良くも悪くもその質を支える膨大な世界背景とSRPGの戦闘システムが作品を縛っているという感じ。気に入る人は気に入る作品だ。

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