編集者の仕事は大変だ
僕も気がつくと兼業とはいえけっこう長い間ライターの仕事をしていて10とか20とかを超える出版社とやりとりをしてきたが、そうなると当然やりとりをしたことがある編集者の数も増えていく。で、何人もの編集者と仕事をみていると、「編集者ってすごいな」と実感として思えてくる。
とにかく現代の編集者というのはやらないといけないことが多い。雑誌の編集なら毎回の締切に合わせて企画立案・提案、対談やインタビューが必要なら人のアサインと場のセッティングと日程調整、写真が必要なら写真をどうするかも決めて、各著者の発言を文字起こしにしてそのゲラを各作家にわたして二往復ぐらいする。で、もちろんひとつの雑誌をつくるのには何十人ものライターが関わってくるので彼らと個別に連絡を取る必要もある。
一冊の本の刊行ならまだことはシンプルだがこちらも著者と何十回もやりとりを繰り返した後、販促までやらねばならぬ。昔はたいしたことができなかったが今はWebや自社媒体がある出版社がほとんどだから、そうなるとやることはいくらでもある。刊行されるとイベントがあることも多いからその調整ややりとりも出てくるし音声や動画メディアに出ることも増えている。
アンソロジーならやりとるする作家は場合によっては20人以上になるし、細かな文章はライターに依頼することもあるから、その場合はライターの文章をゲラにして著者に確認⇛著者からの返信をまたライターに返すみたいなひたすら地道なコミュニケーション、調整が必要になってくる。
編集者の仕事にはクリエイティブな側面もあるが、現状いちばん重要なのは連絡連絡連絡連絡連絡、次いで調整調整調整調整にみえる。個のライターとして編集者とやりとりさせてもらう分には大変ではないが、その結束点である編集者の負担はどれほどのものか完全には想像できない。これまで関わった編集者はみんな尊敬しているし自分には同じ仕事はできないだろうな。
とはいえ、ライター視点でいうとメールベースで特に不満はないのだが、調整も連絡も大変なのはメールベースでやりとりしているからという側面もあるのではないか。たとえば「雑誌の定期刊行」みたいな長期・継続的プロジェクトをやるのであればSlackでもDiscordサーバーでも立ててそこに編集者もライターもデザイナーも校正・校閲者も取次(希望者)も書店員(希望者)も全員集まったほうがええやんと思ってしまう。実際そういうスタイルの雑誌や出版社もあるのかもしれないが、今のところ出会ったことはない。
本の刊行とかも場合によっては数年に渡る可能性があるから、プロジェクトごとに編集者から書店員まで含めたSlackなり何なりを立ち上げてそこで集約したほうがはやいやろと思うのだが、各自バラバラになっている利点も大きいのかもしれない(間に編集者などの緩衝材が入るから喧嘩になりづらかったり。情報が完全に伝わらないことで問題にもなりえるのだけど)。
実際問題社内編集部ではSlackでやりとりしているところも多いのだから、それはリスクを見越しているのかまた別の問題があるのかはともかくあえてやっていないところも多いのだろうな。文藝春秋も社内では使ってるけどライターまでは中に入れているわけではなさそうだし……。
https://slack.com/intl/ja-jp/customer-stories/how-kadokawa-uses-slack
KADOKAWAでは僕がいったような複合的な使い方がされているようだ。
原稿も未だに最終的にはゲラがPDFになってくるので最後までgithubなど使ってテキストデータをバージョン管理しながらやりたいとかいろいろあるのだけど、まあこれは10年以上前から言ってる/言われてるのに実現されていないから(技術評論とかさすがにそっち系の出版社ではそのスタイルでやってる編集者もいるみたいだけど)難しい部分はいろいろあるんだろう
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