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バイエルンの伝説「トーマス・ミュラー」

トーマス・ミュラーとは

バイエルンミュンヘンのレジェンド
「トーマスミュラー」

ミュラーは世界で最も過小評価されている選手と言っても過言ではない。彼には卓出したスピードやフィジカル、テクニック、創造力があるわけではない。
では何がミュラーのすごいところなのか。それは数字には決して表れる事のない、そしてテレビ画面にも映りにくいオフザボール時の動きである。
相手の視野に故意に入ることで味方にスペースを提供する、あえて相手のプレスを受ける位置でパスを受ける、フリーになれるスペースを瞬時に把握して味方に指示を出す、そして自らもゴールとアシストを量産する。ミュラーの凄さを紹介するのには、言語化が難しい。

ミュラーが生み出すゴールは、決して上手いゴールとも綺麗なゴールともゴラッソとも呼ばれない。彼のゴールはいつも「ミュラーらしい」と言われる。これが褒め言葉であるのかは分からない。しかし、その多くのゴールはミュラーにしか作り出せないものなのである。
綺麗でなくとも泥臭くゴールを決める姿はまさしくゲルマン魂の権化である。

ミュラーはしはしば「ピッチ上の指揮官」と呼ばれる。コロナ禍で無観客試合のとき、試合中に大声を出して味方に指示を出すミュラーの声がピッチ上に響いていた。
彼がピッチに居るときと居ないときでは、バイエルンの試合が変わる。それは攻撃時の連携や完成度、攻守の切り替え、守備時の強度やポジショニング全てにおいてである。
しかしパッと見ただけでは、ミュラーがこれにどれだけの貢献をしているのか理解することは出来ない。よほど熟練した指揮官でさえも。

ミュラーの現役生活の中で、ミュラーの使い方を理解できた監督とできなかった監督がいた。
ミュラーをデビューさせたファン・ハールは、2001年のCL制覇以後、低迷していたバイエルンを再び欧州のトップレベルに引き上げた。
ミュラーを重用したハインケスは、サッカー史上最強も呼ばれるハインケスバイエルンを創り上げ、ドイツ史上初の3冠を達成した。
グアルディオラはCLこそ獲ることは出来なかったが、国内では無類の強さを発揮した。
フリックは無限ハイプレスとショートカウンターという、ミュラーを中心とした戦術を用いて無敵のバイエルンを創り上げて二度目の3冠、さらにはドイツ史上初の6冠を成し遂げた。
またドイツ代表監督であったレーヴも、ミュラーを理解できる一人であり、ドイツ統一後初めてワールドカップを制した。

一方で、CL史上最多優勝回数を誇り欧州5大リーグを全て制したアンチェロッティ。フランクフルトに30年ぶりのタイトルをもたらしたコヴァチ。崩壊寸前のチェルシーを率いてCLを制覇したトゥヘル。彼らはミュラーの使い方を最後まで理解出来ず、いずれもバイエルンで結果を出せずに短命政権に終わった。

フロントの失敗と呼ばれるナーゲルスマンを除いて、ミュラーの使い方こそが各監督のバイエルンでの評価を決めたのである。
ファンの反応は顕著なものだ。ミュラーが出場して負けた試合なら、皆仕方ないと負けを素直に受け入れる。しかしミュラーを出場させず、または数分しか出さずに負けた試合では、ファンの怒りの矛先が全て指揮官に向かう。「なぜミュラーを出さないのか?」

この記事で、ミュラーの現役を通じたスタッツや獲得タイトルをまとめた。プロ通算で838試合に出場し287ゴール309アシスト、獲得した32のタイトル。
メッシやC・ロナウドの記録に慣れすぎて、麻痺しているのかもしれないが、ミュラーの記録も十分すぎるくらいの怪物だ。
この数字があってさえ十分に評価されないミュラーは、間違いなく世界一の過小評価されている選手だろう。

ミュラーがバイエルンのトップチームデビューを果たしてから、早16年。ミュラー持ち前の明るいキャラクターがファンに全員に愛された。
初めて日本人としてバイエルンに加入した宇佐美がインタビューにこう答えていた。
「ミュラーは気のいい兄ちゃんだ」
ミュラーは新しく加入した選手に、誰よりも早く話しかけにいき、引くほどのマシンガントークをかますという。誰にでも分け隔てなく気さくに話しかける姿は、まさに宇佐美が言う通りのいい兄ちゃんだ。
また宇佐美はこうも言っている。
「練習中にミュラーを上手いと思ったことはないかもしれない。でも試合形式のゲームをやると、何故かいつもミュラーが居るチームが勝つ」

誰にでも愛されるミュラーにはまた別の顔もある。彼は生まれながらの鬼畜である。
ブラジルワールドカップ準決勝のブラジル戦(○7-1)、12/13CL準決勝バルセロナ戦(○7-0)、19-20CL準々決勝バルセロナ戦(○8-2)など、世紀的な勝利のきっかけはミュラーだった。
相手の心を完全に折り曲げた試合後のインタビューでは、ミュラーは満面の笑顔を見せる。
負けた側からすれば腹立だしいが、本人には全く悪気のないこの鬼畜さもミュラーの魅力の一つ。ミュラーとクロースはドイツが誇る鬼畜コンビだ。

バイエルンの顔であり、バイエルンのレジェンド、そしてドイツ史上最も優れた選手の一人として皆の記憶に刻まれている。

個人成績

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|} \hline
シーズン&年齢&所属チーム&リーグ&&カップ&&CL&&他&&合計&&代表\\ \hline
&&&出場&G/A&出場&G/A&出場&G/A&出場&G/A&出場&G/A&出場&G/A\\ \hline
08-09&19&Bayern München&4&-&-&-&1&1G&-&-&5&1G&-&-\\ \hline
09-10&20&Bayern München&34&13G11A&6&4G2A&12&2G3A&-&-&52&19G16A&6&3G4A\\ \hline
10-11&21&Bayern München&34&12G13A&5&3G2A&8&3G4A&1&1G&48&19G19A&12&4G3A\\ \hline
11-12&22&Bayern München&34&7G13A&5&2G4A&12&2G2A&2&1A&53&11G20A&14&3G9A\\ \hline
12-13&23&Bayern München&28&13G13A&5&1G2A&13&8G2A&1&1G&47&23G17A&9&3G4A\\ \hline
13-14&24&Bayern München&31&13G11A&5&8G2A&12&5G1A&3&-&51&26G14A&12&8G4A\\ \hline
14-15&25&Bayern München&32&13G14A&5&1G1A&10&7G3A&1&-&48&21G18A&10&6G1A\\ \hline
15-16&26&Bayern München&31&20G7A&5&4G3A&12&8G3A&1&-&49&32G13A&12&5G4A\\ \hline
16-17&27&Bayern München&29&5G15A&3&3A&9&3G&1&1G&42&9G18A&10&5G4A\\ \hline
17-18&28&Bayern München&29&8G16A&5&4G&10&3G2A&1&-&45&15G18A&9&1G3A\\ \hline
18-19&29&Bayern München&32&6G12A&6&3G2A&6&1A&1&1A&45&9G16A&6&-\\ \hline
19-20&30&Bayern München&33&8G21A&6&2G2A&10&4G3A&1&-&50&14G26A&-&-\\ \hline
20-21&31&Bayern München&32&11G21A&2&1G&9&2G3A&3&1G&46&15G24A&6&1G1A\\ \hline
21-22&32&Bayern München&32&8G21A&2&-&10&4G4A&1&1G&45&13G25A&10&5G3A\\ \hline
22-23&33&Bayern München&27&7G8A&4&3A&8&1G1A&1&-&40&8G12A&5&-\\ \hline
23-24&34&Bayern München&31&5G11A&1&1G&9&1G1A&-&-&41&7G12A&9&1G1A\\ \hline
24-25&35&Bayern München&-&-&-&-&-&-&-&-&-&-&1&-\\ \hline
合計&&&473&149G207A&65&34G26A&151&54G33A&18&5G2A&707&242G268A&131&45G41A\\ \hline
\end{array}
$$

獲得タイトル

チーム

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
ブンデスリーガ&12&09/10,12/13,13/14,14/15,15/16,16/17\\ \hline
&&17/18,18/19,19/20,20/21,21/21,22/23\\ \hline
DFBポカール&6&09/10, 12/13, 13/14, 15/16, 18/19, 19/20\\ \hline
DFLスーパーカップ&8&2010, 2012, 2016, 2017, 2018, 2020, 2021, 2022\\ \hline
UEFAチャンピオンズリーグ&2&12/13,19/20\\ \hline
UEFAスーパーカップ&2&2013,2020\\ \hline
FIFAクラブワールドカップ&2&2013,2020\\ \hline
FIFAワールドカップ&1&2014\\ \hline
\end{array}
$$

個人

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
2010&ワールドカップ&得点王(5G)\\ \hline
09/10&DFBポカール&得点王(8G)\\ \hline
13/14&DFBポカール&得点王(4G)\\ \hline
17/18&ブンデスリーガ&最多アシスト(16A)\\ \hline
19/20&ブンデスリーガ&最多アシスト(21A)\\ \hline
20/21&ブンデスリーガ&最多アシスト(21A)\\ \hline
21/22&ブンデスリーガ&最多アシスト(21A)\\ \hline
\end{array}
$$

通算記録

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
Bayern  München&出場(707)&歴代2位\\ \hline
&ゴール(242)&歴代3位\\ \hline
&アシスト(268)&歴代1位\\ \hline
Die  Mannschaft&出場(131)&歴代3位\\ \hline
&ゴール(45)&歴代6位\\ \hline
ブンデスリーガ&出場(473)&歴代18位\\ \hline
&ゴール(149)&歴代17位\\ \hline
&アシスト(207)&歴代1位\\ \hline
DFBポカール&出場(69)&歴代9位\\ \hline
&ゴール(34)&歴代9位\\ \hline
&アシスト(26)&歴代1位\\ \hline
チャンピオンズリーグ&出場(151)&歴代7位\\ \hline
&ゴール(54)&歴代7位\\ \hline
&アシスト(33)&歴代8位\\ \hline
ワールドカップ&出場(19)&歴代15位\\ \hline
&ゴール(10)&歴代10位\\ \hline
&アシスト(6)&歴代12位\\ \hline
\end{array}
$$



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