マーケティング:オウンドメディア 準備編
はじめに
こんにちは、マーケティング責任者の大石と申します。
この記事では僕たちが現在進行系で取り組んでいるオウンドメディアの構築方法と運用方法を解説していきます。
正直、かなり面倒な部分やGoogleに左右されるリスクなどはありますが、きっちり攻略できれば大きな集客の柱になるので少しでも参考になれば嬉しいです。
オウンドメディアを作る理由
大規模な資金調達をせず少ない資本でD2Cのブランド事業を始める時の最大のネックは広告予算の少なさです。
例えば通常のWEB広告は利益の出る獲得単価を実現するために、仮説と検証を繰り返します。つまり広告予算が多ければそれだけ仮説検証のサイクルを速く、かつ多くまわせるため圧倒的に有利になります。
その点オウンドメディア(自社で運営するメディア)にかかる費用は比較的安く、個人でも簡単に始めることができます。
『事業を始めたはいいものの広告を使う余裕も無い…』という方はまずオウンドメディアを立ち上げてみてはいかがでしょうか。
実際にメディアの運営にかかる費用を下記にまとめてみました。
【WEBサイトを制作する費用】
・レンタルサーバー代
⇒WEBサイトを作る時に必要なものです。WEBサイトが家ならサーバーは土地のようなもの。
国内で有名なエックスサーバーというレンタルサーバーの場合は年間で税込16,500円から始められます。更に格安のサーバーなら年間数千円で使用できます。
・ドメイン取得費用
⇒ドメインとはインターネットという大きな世界の中で自分の家を示す住所のようなものです。WEBサイトのURLを見ると◯◯.comや✕✕.netという文字列を見かけることが多いはずです。
.comや.netなら1000円ぐらいで取得できます。有名なものにこだわらなければ100円程度のドメインもあります。
・テーマやプラグインの購入費(サイトデザインにこだわる場合)
⇒多くの場合WEBサイトを始める時は『WordPress』などのCMSと呼ばれるサービスを使います。『ブログなどのWEBサイトが簡単に作れるサービス』と認識しておいてください。
WordPressなどのデザインや機能をカスタマイズするのがテーマやプラグインと呼ばれるものです。テーマやプラグインは無料の物も多くありますが、有料の場合は10,000〜20,000円ぐらいのものが多いです。
HTMLやCSSと呼ばれるプログラミングに必要な言語を使える人ならテーマを使わずに自分でカスタマイズすることも可能です。
【運営に必要な費用】
・記事の外注費(スピード感を持って大量の記事を上げる場合)
⇒外部のライターさんに『こんな内容の記事を書いてください!』と依頼をすることで効率的にWEBサイトを運営できます。
相場としては1文字0.5円〜1.5円ぐらいです。もちろん全て自分で書くならこの費用はかかりません。
つまり、外注のライターさんへの報酬以外は高くとも年間5万円以下で大量のお客さんを集める準備ができます。
とはいえ、記事の作成やメディアの運営には多大な労力がかかります。本当にオウンドメディアを作って売上が上がるのか不安に思う人もいるでしょう。
そこで、わかりやすいように『事業内容に関連していて月間20万人が閲覧するWEBメディア』を作れたと仮定してみます。
ーーーーー
まず20万人の人がメディアを訪れます。その中の数パーセントがあなたの事業の商品に興味を持ちECサイトに辿り着きます。
仮に閲覧者全体の1%が自社のECサイトに来てくれた場合は2000人です。その2000人のうち、更に1%が商品を購入した場合は20個の商品が売れることになります。
そのお客さんがリピーターになったりとLTVの平均が2.5万円だとしましょう。
それだけで月間50万円の売上を生み出してくれます。(実際の閲覧数や商品に興味を持つ人の数はかなり少なく見積もっています)
ーーーーー
WEBでの販売が主な事業の場合、継続性があり、かつ自社の力だけで商品を売れる場所は非常に貴重です。
だからこそ、事業を始めたら早い段階からWEBメディアの運営に着手するのがおすすめです。
メディアを立ち上げる前に専門用語を理解しよう
WEBサイトを運営していると多くの専門用語を使うことがあります。
専門用語を覚えておくとこのnoteを含めウェブマーケティングを今後スムーズに理解できるので基礎的なものをいくつかご紹介します。
・PV
ページビュー数、つまりページの閲覧数です。Aさんが同じページを3回見ても3PV、違うページを3回見ても3PVです。
・セッション
WEBサイトへ訪問した人の数です。Aさんが1度の訪問で10ページを見ても1セッションです。
・CV
コンバージョン(Conversion)の略でWEB業界では成約という意味で使われます。例えば商品の購入を目標としていて3回商品を買われたら3CVです。
・WordPress
ブログなどのWEBサイトを簡単に作ることができるサービスです。CMS(content management system)と呼ばれるコンテンツの管理システムの1つです。
・バナー
WEBサイトの中で他のサイトなどを紹介するための画像のことです。画像や付近のテキストに他のサイトへのURLを設置しておくことが多いです。
・CTA
コールトゥアクション(Call To Action)の略で行動を喚起するためのテキストや画像、ボタンのことを指します。WEBサイト内よく見かける『◯◯はこちら』のようなボタンや、そのボタンに誘導しているテキストなどがCTAです。
・検索エンジン
GoogleやYahooを代表とするインターネットを使って情報を検索するシステムのことです。
・SEO
サーチエンジンオプティマイゼーション(Search Engine Optimization)の略で『検索エンジン最適化』という意味です。検索エンジンで検索された時に自分のWEBサイトを見つけてもらいやすくするための取り組みを指します。
・キーワード
検索エンジンでユーザーが検索する単語や文字列のことです。例えば『HushTug』というブランドのECサイトにたどり着くためには「HushTug」「ハッシュタグ バッグ」「ハッシュタグ カバン」などのキーワードが使われます。
・検索ボリューム
検索エンジンで実際にキーワードが検索される回数のことです。月間の検索ボリュームで示されることが多いです。
・インデックス
自分のWEBサイト(ページ)を検索エンジンに認識してもらうことです。新しいWEBサイトを作って、それがどんなに役に立つものでもインデックスされていない状態ではGoogleやYahooの検索結果に表示されません。
・クラウドソーシング
不特定多数の人に業務を委託するサービスです。日本ではクラウドワークスやランサーズなどが有名です。発注する側は多くの人に仕事の依頼を見てもらうことができ、受注する側は自分の得意な分野で仕事を探すことができるなどのメリットがあります。
メディア立ち上げから収益化への流れ
それでは最初にメディア運営のざっくりとした流れを見ていきましょう。
(詳しい内容は後で解説するのでこんな事をするんだなあ、ってぐらいに見てください)
1. レンタルサーバーやドメインを用意してWordPressをインストールする
2. どんなメディアを作るかを決める
3. サイト設計を考える
4. 大量の記事をGoogleにインデックスさせ続ける
5. 自社サイト(EC)への導線を作る
集客用メディアの場合は変わった事業形態のものを除けば上記のような流れです。1つずつ解説していきます。
1.レンタルサーバーなどの用意
メディア運営のためにはサーバーとドメインが必須です。
格安で使えるサーバーもありますが、PVが爆発的に増加した時にページが開きづらくなることがあります。
不安な場合は国内大手のエックスサーバーなどを使うのが無難でしょう。エックスサーバーの場合は有名なので、関連する記事が多くトラブルが解決しやすいのもメリットの1つですね。
(ちなみに月間数百万PVのトレンドメディアを運営していた時はエックスサーバーでもアクセス障害でページが開けないことがありました。エックスサーバーのプランを更に高いものに変更することで解決したので、最安プランから徐々にアップグレードしていくのが最適でしょう)
2.どんなメディアを作るか
今回解説する集客用のオウンドメディアはまだ世間に認知されていない事業を知ってもらい、ECサイトに訪れてもらうのが目的です。
有益な情報を更新するのはもちろん、お客さんとなりうる人が知りたいと思える情報を発信するメディアを作りましょう。
しかし競合(ライバル)が多い、もしくは強い市場であればあるだけ自社サイトの検索順位を上げるのは難しいです。例えば企業のWEBサイトが多い市場や商品の購入に直結する市場は強いライバルが多い市場と言えるでしょう。
例えば化粧品のブランドを立ち上げたとします。『化粧品』をテーマにメディアを作ったとしても『化粧品』というのは商品の購入に直結するので非常に強いライバルがたくさんいます。
作ったばかりの誰にも見られてないサイトでは恐らくGoogleやYahooの検索結果には表示されないでしょう。(少なくとも検索結果の5ページ目までには入らないと思います)
ここで選択すべきなのが「最初に狙う市場をずらす」か「最初から商品購入に繋がる市場を書く」かです。ちなみにHushTugの運営するHushTugNOTEは前者の「市場をずらす」を選択しました。
⇒最初に狙う市場をずらす
立ち上げたばかりのサイトは検索エンジンからの信頼性が無く、情報が有益かどうかもわからない状態です。つまり良質な記事を上げてもすぐに検索上位には上がりません。ライバルが強い市場ならなおさらです。
そこで、更に競合サイトが弱い市場へ狙いをずらすことで比較的早く検索結果の上位に表示され、見込みのあるお客さんに商品を宣伝できるというわけです。
とはいえ全く違う市場にずらしたらお客さんに購入してもらえる確率は低いですよね。ずらす場合はできれば「ターゲットのお客さんが興味を持つお金に繋がりにくい市場」にずらすことが理想です。
「お金に繋がらない=企業や強いアフィリエイターが少ない」ということなので検索エンジンに表示されやすく、早い段階でPVを集めることが可能です。
専門的であればあるだけSEO評価が高くなるので、最初はできるだけ1つの話題について書いていくのが良いでしょう。
【ずらして始める場合のメリット】
・競合が弱い
・つまり早い段階でPVを集めやすい
・PVを集めることによりメディア全体が検索エンジンから評価されやすい
・今商品が欲しいお客さんだけでなく潜在的にお客さんになり得るユーザーも集められる
・後に今すぐ欲しいお客さんを集める時(強い市場に挑戦する時)に検索順位が上がりやすい
・PVが集まりやすいので精神的に楽
【ずらして始める場合のデメリット】
・すぐには目的の商品が売れない
・場合によってはある程度時間がかかる
こちらのパターンで注意しておきたいのが「最初に狙う市場」はずらすが「メディア全体のコンセプト」は広くしておくことです。
メディア全体のコンセプトまで狭くしすぎてしまうと、後にメディアが成長してきてCVに繋がる記事を書く際に違和感が出てしまいます。
HushTugNOTEの場合は『ファッションやライフスタイルに関する「今知りたい事」をお届けするメディア』というコンセプトです。最初は革製品が好きな人やかっこよくなりたい人を集めるために革の手入れやファッションに関する悩みについて書きました。
例えば上の画像のような「革財布の黒ずみを落とす方法」についての記事がこれにあたります。
商品購入の可能性は低い代わりに比較的弱い市場でお客さんをたくさん集客できたため、メディア自体が強くなり今は自社の商品を売るためのライバルが多い市場でも検索上位を取れています。
HushTugNOTEでいえば「スーツに合うリュック」について解説している記事などは非常にライバルが多い市場ですが検索結果の上位に上がってきている良い例です。
このように『ずらす』というのは始めたばかりのメディアが効率よく成長するための比較的「固い」「堅実な」戦略です。
⇒最初から商品購入に繋がる市場を選ぶ
あえて市場をずらさずに、自分の売りたい商品に直結するメディアを立ち上げて商品の購入に繋がる記事のみを書き続けるのも1つの手ではあります。
Googleは専門性のあるサイトを評価しやすいため、確率は低いですがうまくいけば比較的早くCV(商品購入)に繋がるキーワードで上位表示できます。
ただし前述した通り、競合サイトは非常に強い場合が多いです。
「1〜2年間は記事を書き続けてもまったく上がらないかも」という覚悟を持って取り組みましょう。
少人数で運営する場合や、月に書ける記事数が少ない場合は特に結果が出にくいと思います。
もちろん続けていれば上手くいく可能性はありますが、最大のデメリットは『続かない』ことです。個人的な経験則では90%以上の人が挫折して辞めてしまいます。
【商品購入に繋がる市場を選ぶ場合のメリット】
・うまくいけばすぐに多くの商品が売れる
・専門性が高く検索エンジンからの信頼値が高くなる
【デメリット】
・競合が強いのでそうそう上手くはいかない(時間がかかる)
・上手くいかない場合はその期間ほぼ収益が発生しない
・つまりお金と精神的にめちゃめちゃつらい
・潜在ユーザーは獲得できない(今すぐ欲しい人しか集められない)
最初からライバルが強い市場で戦う場合は、ドメインの信頼性が無く情報量も少ないメディアで強い競合サイトを押しのけていかなくてはなりません。
上位表示するのは至難の業であるという事を理解した上で取り組みましょう。
3.サイト設計
本格的な運営の前にサイトの設計を考えておいたほうが良いです。
トップページに表示する内容、カテゴリ分け、記事から自社のECサイトまでの導線もこの時点でイメージしておきましょう。
ちなみにHushTugNOTEのトップページは新着とおすすめの記事、カテゴリだけです。ほとんどのユーザーは検索エンジンから直接個別の記事に訪れるため、凝ったトップページを必要としていないからです。
また、潜在ユーザー(今購入を検討しているわけでは無いお客さん)も集客しているため、直接商品に関わる記事以外でもお客さんの目に触れるような自社の広告を掲載しています。
実際に収益化を考えるのは記事が読まれるようになってからでも良いので始めた時点ではイメージだけでも十分かもしれません。
4.大量の記事をGoogleにインデックスさせ続ける
ここが1番大変な項目かもしれません。ただし、それだけ重要です。
市場をずらして検索上位に上げやすい市場を決めたら大量の記事をインデックスさせましょう。(インデックスは検索エンジンに認識してもらうこと)
詳しくは『記事作成』の章で説明しますが「コンテンツ量」は検索順位が決まる重要な要素の1つです。(もちろん量だけでは無く質も大切ですが)
例えば「ヘッドフォン」について、同じぐらい良質な記事を上げている2つのサイトがあったとします。
Aは5000文字の記事×10記事
Bは5000文字の記事×20記事
この2つであれば後者のほうが評価されやすいです。(もちろん絶対ではありませんが経験則です)
ある話題についてのコンテンツ量が多いということはそれだけ話題に対する専門性や信頼性も高いとみなされるわけですね。
だからこそ、ある程度PV数が増えるまでは毎日数記事上げるぐらいに量にこだわっていいと思います。オウンドメディアで集客できるまでの期間を縮めたいならなおさらです。
また、それらの記事全てを自社で書くのはすごく大変です。重要な部分以外はクラウドソーシングで外注のライターさんを募集して記事を書いてもらいました。
特にメディアを始めたばかりの頃は検索の順位も低くPV数も少ないため、目標とする指標が公開記事数にしてどんどん記事をインデックスさせましょう。
HushTugNOTEの場合は最高でライターが30〜40人、月間100記事以上を目標にしていました。
5.自社サイト(EC)への導線を作る
もちろんメディアでPV数を増やして終わりでは無く、自社の商品を売っていく施策に取り組んでいきましょう。
HushTugNOTEの主なECへの誘導ポイントは記事の目次下にあるバナー広告と記事コンテンツ下のCTAです。CTAは記事に紛れ込むようなデザインにすることで目的とする記事と一緒に読んでもらえるようにしています。
上記の施策の結果、商品との関連性が少ない記事全てで約1%のユーザーがECへのリンク(バナー,CTA)をクリックしています。
これに加えて、商品との関連性の高い記事では記事の中にもリンクを設置しています。
関連性の高い記事(他ブランドの紹介などもしている)の場合は記事の内容や順位にもよりますが5〜15%のユーザーがECを訪れています。
ここまでがざっくりとしたメディア運営の流れです。
ここまで読めばなんと無くどんな事をすれば良いのかはわかったと思います。
もしかしたら意外と細かいノウハウが無いように感じたかもしれませんが、メディア運営はノウハウ2割、仕組み作りが8割のビジネスです。
次からはそのノウハウや仕組み作りについて細かくご紹介します。
オウンドメディア実践編はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?